学園の花婿 145
まだ私の独断という段階ですが、是非引き受けて下さいませんか?」
桃華が上目使いで良一を見ると、良一は少し困った顔になる。
「桃華お姉ちゃん…僕になんか無理だよ…それに麗那お姉ちゃんにも相談しないと…」
「良一達、私からもお願いします」
そこにいつの間にか話を聞いていた愛が相変わらず無表情のまま良一にお願いする。
「でも…」
「すぐに決めて欲しいなんて言いません。ただ…少しは考えて下さいませんか?」
桃華はそう言うと良一の手をグッと胸に押し付ける。
良一の表情は相変わらずのままだが、「桃華お姉ちゃんの頼みなら…」と思う様になっていた。
その後生徒会の話はぱったりと終わり、桃華が良一に良一の寝ていた時の事などを話す。
そうこうしている内にいつの間にか学園長室のドアの前に到着する。
「良一様…生徒会の話ですが、本音は私が良一様と一緒にいたいだけなんです」
桃華は少し照れた様に話すと、学園長室のドアを開ける。
「麗那お姉様、ただいま戻りましたわ」
そして良一の回答を待つ事なく、一人麗那の元へ近寄るのであった。
「良一様、わ…」
「良くん、お帰り!今日一日どうだった!?」
愛が何か言おうとするが、それよりも先に麗那が良一を見付けて良一の元に寄り、良一を抱き締める。
「うん、楽しかったよ!」
良一は顔を麗那の胸に押し付けながら嬉しそうに答える。
「桃華ちゃん …それに…愛ちゃん。今日一日良くんと遊んでくれて有難う。これからも良くんを宜しくね」
麗那は良一を抱き締めたまま、奥の部屋に去っていく。
残された桃華は良一に手を振って見送るが、愛の表情は複雑だった。
(結局良一に何も伝えれなかったわ… 今度がいつになるか分からないけど、いつかきっと…)
愛は横で幸せそうに良一を見送る愛にとっての最大のライバル、桃華をチラッと見て、桃華にだけは絶対に負けないと心に誓うのだった。
その後良一はいつの間にか麗那の胸の中で寝てしまう。
「良くんったら…今日一日遊んで疲れたのね」
麗那はソファーに座り、良一を抱えたまま良一の頭を右手で優しく撫でる。
しかし、その左手には何かの書類が握られていた。
「有難うサラ。そう、桃華ちゃんこんな事を言ったんだ… 桃華ちゃんの気持ちも分からなくもないんだけど、良くんは私の良くん。良くんとの時間を勉強以外に割く訳にはいかないわ」
そう、麗那の手にある書類は、今日一日良一・桃華・愛の三人の行動・発言の全てを記したものである。
サラ達警備局の数人の隠密行動のエキスパートがずっと側にいて調べたものなのだ。