レースクイーンの悲劇 1
レースクイーンはサーキットの華である。
レースを盛り上げるのがこのレースクイーンでありとりわけ日本の場合は派手で外国人レーサーもよく驚く事もある。しかし彼女らはバイトといった素人からプロでもモデルの傍らとしてしている子が多い。秋月栞(あきづきしおり)は前者であって家族揃ってレース好きと言う事でこのバイトをしている。
「シーちゃん、学校から直行したんだ」
「うん!」
花の高校生である彼女に話しかけるのが同じバイトをしている牧瀬紫苑(まきせしおん)であり大学生である。彼女の場合は恋人がレース好きで数年前にレースクィーンが都合が付かなかった所に関係者が紫苑を見つけ口説き一度限りと言う事でしたが彼が気に入りそのままバイトを続けている。レースは週末にするので学生にとっては都合がよくその上見入りがよいのである。
所属しているレーシングチームのスポンサーにアパレルメーカーがあってその縁で衣装に関しては楽である。
レースクイーンは基本高身長で美脚が好まれるのだが2人はそれに加えて胸もかなりのボリュームを誇る。
栞や紫苑は業界関係者も注目する「金の卵」だ。
かつてはワンピースの水着でハイレグにして脚線美を競っていたが、近年の衣装は割と露出度の低いセパレートが主流なので、よりラインを出す事でセクシーさを競う方向となり、バストとのヒップの大きさと形の良さが重視されるようになった。
レースのマシンが洗練されていくように、レースクイーンもパットやガムテープによるごまかしでなく、生理食塩水のバッグや脂肪注入でサイズと自然な揺れと重量感が再現される。
顔も整形丸出しの人工的な美でなく、若くて可憐な中にも妖艶さが見え隠れして多くの男性を魅了する。
しかし、努力と運は必要で2人はエクササイズや形の維持に加えて生まれ持っての豊満さと、笑顔と愛想の良さで多く撮影されることで衣装に入っているスポンサーのロゴも多く写って貢献できた。
「やあ2人ともよく来てくれたね。今年のコスチュームだよ」
アパレルメーカーの関係者が2人に衣装を手渡す。
セパレートのヘソ出しルック、下はミニスカ風。
夏場は上の衣装を脱いでビキニになるといった具合。
「へぇ、結構攻めるのね…」
「ちょっと恥ずかしいかも…」
「メディア宣伝用の写真を撮りたいから、そこの部屋で着替えてきてほしい」
「あっ、はいっ」
「ビキニで、ですか?」
「一応上も着たバージョンと、ビキニのバージョンと2パターン撮らせてもらうよ。将来のグラビアアイドルだからね、お二人さんは」
「ええっ、そんなぁ」
栞にとってレースクイーンの仕事はあくまで大学進学のための費用を稼ぐためのアルバイトにしか過ぎなかった。芸能界の話なんて夢のまた夢だと思っていた。
一方の紫苑はいい話が来たらそのまま乗っかってしまおうとも思っていた。