復讐の触魔 9
「花田が倒れていた屋上…直前までお前が一緒にいたのは聞いているぞ」
「ですが…」
留美はさらに力を込め真梨子の首根っこを締め上げる。
「こういうのを体罰って言うんじゃないですか?」
「人一人精神破壊してよく言えるな」
「…私だってヤツからは酷いいじめを受けていた、それはどうするんですか?」
「そんな事実は聞いてない、お前も妄言はほどほどにしろよ」
…留美の勝手な言い方に、さすがの真梨子も我慢がならなくなった。
留美が真梨子を突き放す。
「もう一度聞く。花田をどうしたんだ?」
「だから何も知りません」
「それ以外に何もないのか?」
真梨子が小さく頷くと、次の瞬間、留美の右ストレートが真梨子の顔面を襲う。
「舐めた真似はもうやめろ。ただじゃ帰さんからな」
「…ぅ」
留美は冷たく言い放つ。
…真梨子は頬の痛みに耐えながら、ポケットからあの固形物を取り出した。
それを地面に置くと、そこに向かってツバを飛ばす。
一緒にカバンは持っていたから、香奈子のときのようにペットボトルの飲料水をかけることもできたが、それは今は不自然な行為と留美に悟られてしまう。
それに、固形物を変化させるにはどんな液体でも、量も関係ない。
次の瞬間には、真梨子の背後に巨大な塊が召喚されていた。
「…な、なんだそれは」
留美の表情が一転、驚きに包まれる。
「口で言ってもわかってもらえなかったら、こうするしかありませんね」
真梨子の背後でワラワラと蠢く物体。
それは香奈子を襲ったものよりもさらに一回り大きい感じだ。
「な、なんだ気持ち悪い…早く仕舞え!」
「仕舞えと命令されてしまうアホはいません」
「お前…何のつもりだ!」
「何のつもり?そんなのあなたに言うようなことじゃない」
明らかに動揺する留美。しかし真梨子は余裕。
焦り怯える留美の表情を楽しんでいる気配すらあった。
「安心してください、先生…命に関わることは致しませんから…」
「そ、そういうことじゃないだろ!お前、これ、何とか…」
留美は必死の表情で背後の巨大生物を排除させようと真梨子にせがむが、真梨子は当然それを許さない。
そして、触手が留美の元へと接近し、目にも止まらぬ速さで彼女の両手足を拘束する。
「おい!なんだこれは!離せ!」
留美は抵抗の声を上げもがくが敵うはずもない。