初体験はお姉ちゃんそして…… 174
「ご馳走様。」
「まだよ。」
「ママ、何で?」
「沙耶が買ってきてくれたケーキがあるでしょ?」
「違うよ〜。お兄ちゃんが買ったんだよ〜。」
「そうだったの?」
「アンタよくお金があるわね。」
「お姉ちゃんがこの前全部払ってくれたからね。」
「ああ……でもあれはね……」
「如何した?舞?」
「なんでもないわパパ。」
「ケーキ切ったわよ。」
「わぁ美味しそう。」
「そうね。早速もらうわね。」
「ママも座って〜。」
「ええ。頂くわ。」
「おお、これ旨いな。」
「パパは〜気に入ってくれた〜?」
「旨いよ。舞と茜は?」
「美味しいわ。」
「最高だよぉ。良いなぁ沙耶ばっかり。」
「来年は茜と通学するから今度は立場が逆になるよ。」
「でもぉお兄ちゃん沙耶には甘いからなぁ……」
「あら?ヤキモチ?」
「お姉ちゃんうるさいよぉ。」
「まあまあ。」
母親が茜を軽くなだめてくれた。
夜、お盆のどこも混む時期は出かけないのがうちの慣例である。そこでお盆の内に何をやるかそれぞれ考えを出すべくお姉ちゃんの部屋に集まった。
「沙耶は〜クラリネット完璧にして〜指揮法覚える〜。」
「それは面白いわね。茜は?」
「体力を落とさないように毎日運動するよぉ。水泳とか。」
「そう。分かったわ。私は……」
「ちょっと待って先に言わせてくれないかな?」
「あ、最後にいうのがいやなのね。良いわよ。」
お姉ちゃんより後に言うと大体僕の目標は見劣りするのだ。
「ドイツ近代化についてレポートを作成する。」
「又それ〜?」
「お兄ちゃん去年と変わらないよぉ。」
「私もそう思うわ。」
歴史学について研究するというのは僕の夏の慣例となっている。昨年は太平洋戦争、一昨年は秀吉の天下統一について、その前の年は近代日本の成立であった。
「じゃあ〜沙耶と〜共同制作にしよ〜。」
「そこで妥協しても良いよぉ。」
「その代わり音楽のことも勉強するのよ。」
「大丈夫大丈夫。それより沙耶が足引っ張るなよ。」
「あ〜、又沙耶の事〜……」
「私はねえ……」
「沙耶の話遮った〜。」
「さっきの続きは『子ども扱いする』かしら?」
「お姉ちゃんの方が〜沙耶の事見下してる〜。」
「そうやってすぐ口を尖らせたり膨れたりしない方が良いよぉ。」
「そうよ。で、私の目標言って良いかしら?」
「沙耶が聞こうとしたらね。」
「分かった〜。聞くよ〜。」
「私の今年夏の目標は文化祭の最優秀主演賞を取るために努力すること。」
「珍しく努力目標だね。」
「珍し〜。」
「ホントだぁ。」