「じゃあ……ステーキセットにポテト、それからコーラフロート。」
「はいはい。」
「お兄ちゃんはぁ？」
「鱈のムニエル。」
「一品料理？やっぱりお金ないんじゃないのぉ？」
「僕は深夜に食事する習慣がないから。」
「私だってないよぉ。」
「でも部活で遅い日は何か食べてから帰ってくるだろ。それでも夕食は食べる。だから茜は深夜まで起きてるとお腹が空くんじゃないかな？『運動』したし。」
「『運動』ね……ところで今日のお兄ちゃんやたらとよく喋るねぇ。どうしたのぉ？」
「そう言われてみるとそうだね。」
「ボーイさぁ〜ん!!ステーキセットとポテトフライ、コーラフロート、それから鱈のムニエル。」
「はい。ステーキのお肉の焼き加減はいかがいたしましょうか？」
「え？」
茜はキョトンとしている。
「そうか……しまった……。意味がわかってないんだ。」
「え〜？お兄ちゃん助けてぇ。」
「ボーイさんに尋問されてるみたいな言い方しない!!すいません。」
「あ、いえ……」
「茜がどこまでお肉を焼いてほしいか聞いてるんだよ。」
「で、なんて答えればいいの？」
「生に近いほうからレア、ミディアムレア、ミディアム、ウェル、ウェルダン。確か……レアよりも生に近いのがベリーレア、焙っただけ位のはブルーとか言ったっけ。」
「後半が怪しいなぁ。」
「大体僕はレアかミディアムだからね。」
「それってどのくらいなのぉ？」
「レアだとまだ真ん中は赤いけど余熱で火が一応通ってる、ミディアムだと大体全体的に色が変わってる位かな？」
「ふ〜ん。じゃあレアでぇ。」
「かしこまりました。」
「セットはフランスパンとライスがございますが？」
「フランスパンでぇ。」
長い注文が終わった。
「お疲れ様。」
「ビックリしたよぉ。」
「そうか。何で？」
「だってぇ全然わかんないこと聞かれたんだもん。お兄ちゃんが居なかったら大変なことになってたよぉ。」
「ボーイさんが教えてくれるよ。日本語だから通じるだろ。」
「パニックになったら分かんないよぉ。」
「既に半分パニックだな。」
「こんな所に来たことなかったしぃ。」
「でも、沙耶にはこういう事教えてあったから、茜にも体験させようと思って。ちょうどいいお店があったからね。」
「沙耶にはいつ教えたのぉ？」
「夏休みの初日に出かけたとき。」
「ふ〜ん。」

「お待たせいたしました。野菜スープと前菜になります。」
「え？私……」
「ご注文のお品と違いますでしょうか？」
「あ、すみません。これで合ってます。」
「え？私ステーキセット頼んだのにぃ……」
「気を利かせて先に持ってきてくれたの。」
「そうなの？」
「コース方式で順番に食べていくんだよ。」
「そうなんだぁ。」
「本当はナイフとフォークも並んでるんだけどそこまではないか。」
「そういう時はぁ？」
「外側から使うんだよ。」