未亡人の性愛 2
「はあ……。もう、ホントにもったいないわ……。アンタみたいな女が男を寄せ付けないで生きていくなんて──。本人にとってもアレだけどさ、それよりも何よりも、この社会全体にとって損失が大き過ぎるわよ……」
私のことを褒めてばかりいる陽子だが、そんな彼女だって歩けばスカウトに声をかけられるぐらいの顔と身体の持ち主なのだ。
だから、陽子にそう言ってもらえるのは嬉しいけれど──。
でも、やっぱりダメなものはダメなのだ。
夫が死んで五年であろうが、十年であろうが、私はいつまでも彼の女なのだから。
彼とは死に別れただけであって、別に愛情がなくなったとかそういう話じゃないんだから。
やっぱり他の男性のモノを──たとえそれがオモチャのペニスであってもだ──受け入れる気にはなれない。
だというのに目の前の悪友は、「男を作れ男を作れ」と口うるさい。
結局時間になって席を立つその時まで、私は彼女に説得され続けてしまうのだった。
「ね、美咲、一度でいいからヤッてみなよ、それでイマイチだったら続けなくていいしさ……。とりあえず一回は旦那以外の男に抱かれてみなって。きっとアンタは女の幸せを知らない──か、もしくは五年だしね……、忘れてるだけっていうこともあるかもしれないんだしさ──、ね?」
自宅マンションに帰り着く私。
部屋の電気をつけて、服を脱いでいく。
学生時代にも、夫が生きていた頃にも、あまり部屋の中で裸でいるということはなかった。
なのに夫が死んでから──それもここ最近は特に──裸でいたいという欲求が強く湧き起こってくるのだった。
どうしてだかは分からないが……、やっぱり“そういうこと”なのだろうか?
シャツやスカートだけではなく、ブラやパンツまでも脱いでいく。
帰ってきてすぐなのに、私はもう生まれたままの姿になっていた。
そっと姿身の前に立ってみる。すると鏡の中には──いまだに衰えることを知らない、魅力的な女性が映っているのだった。
ナルシストの気はないと思うのだが……、自分でも惚れ惚れしてしまうほどの完璧さだ。
二十代の後半ともなれば、人によっては肌が荒れてきたり、肉が付いてきたりすることもあるのかもしれない。
けれど目の前の自分は、二十代前半──どころか、十代のモデルさんにも負けない身体つきをしている。
Dカップのバストは張りがあり、乳首もピンと上を向いている。
腰周りには一切の贅肉がなく、くびれのカーブが目に心地いい。
腕を上げてぐるりと一周してみる。
元々毛深い方ではないので、ほとんど剃る必要のないわきの下。
丸みを帯びたお尻はキュッと引き締まって、まだまだ垂れてくるということもなさそう。
全身の肌に一切のシミがなく、ホクロすらも見当たらない。真っ白で雪のような肌。
私はそんな自分の身体を眺めていると、ついつい陽子の言葉を思い出してしまうのだった。
「──アンタみたいな女が男を寄せ付けないで生きていくなんて──。本人にとってもアレだけどさ、それよりも何よりも、この社会全体にとって損失が大き過ぎるわよ──」
「……」
本当に、そうなのかもしれない──。
私がその気になれば、男なんていくらでもゲットできるだろうし……。
それに男ができたらできたで、その相手を世界中の誰よりも幸せにしてあげられる自信もある。