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未亡人の性愛
官能リレー小説 - 若奥さん

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未亡人の性愛 1


「──で、旦那が交通事故で亡くなってから、それから全く何にもナシ? 他の男を試してみようとか、一度たりとも思わなかったワケ?」
 午後四時という中途半端な時間帯。地下街の一角にある某喫茶店、その奥の席で……。
近くに人がいないのをいいことに、久しぶりに会った友達──澤近陽子は大きな声で驚いていた。
「ちょっと、声が大きいよ……」
「いや、だってさ……。そりゃ、声だってデカくなるよ……。だって五年でしょ? 21から26っていう、女の一番いい時に5年も男ナシで過ごしてたなんて……。いや、ホント、私には到底信じられない話よ……。ありえないわ……」
 陽子はそう言うと溜め息混じりに頭を振るのだった。
「だ、だって──。私だってそういう気持ちがない訳じゃないけどさ……。でも、ほら、やっぱりダメじゃん、何ていうか、夫に申し訳ないというか……」


ぢゅるるるるるる──。
残ったアイスコーヒーをストローですすって、彼女は「馬鹿かアンタ」という目でこちらを見つめてくる。
「夫に申し訳ないって……。夫もう死んでんじゃん……」
「いや、それはそうなんだけど、でも……」
「美咲、アンタまさか、“彼が天国から見てるかもしれないから──”なんて言うつもりじゃないでしょうね? どこの中学生よ……、乙女か。今時そんなの流行んないよ? あのね、いい? 今はね、もし若くて美しい妻が一人で遺されたとしたら──」
「……遺されたとしたら?」
「さっさと前を向いて、新しい幸せを見つける! ズバリ男よ! 新しい男を見つける! もうそういう時代なのよ。何でその歳で──しかも、そんなに美人でオシャレなのに……昭和みたいなこと考えられんの? 全くもって理解不能なんだけど」
「うううぅ……」

「あ、まさかギャップ萌え? ギャップ萌え狙ってたりする? 見た目はどこのファッションモデルかっていうほど美人なのに、内面には昭和の魂が宿っています──なんていう」
「狙ってないよ! そもそも誰に対して狙うのよ! 違うよ、そんなんじゃなくて……、みんながみんな陽子みたいにサバサバした性格じゃないってだけよ……」
「別にそんな性格じゃなくっても、思い切ってサバサバしてみればいいじゃない。簡単よ? そこらの男に声をかけるなり、かけられるなりすれば──もう一発よ。特にアンタみたいな美人ならなおさら。ホント、アンタほどの美人が男はべらせて幸せにならないでどうすんのって話よ」
「うううぅ……」


本当に、久しぶりに会っても陽子は陽子のままだった。
高校時代はクラスメイトだけでは飽き足りず、上級生下級生、果ては担任、教頭、校長まで食ったという逸話の持ち主。
「女に生まれたからには、女の幸せを目一杯享受してやるんだ!」がモットーの現代っ子。
まっとうな貞操観念など持ち合わせておらず、病気にさえ気をつけていれば気持ちいいことはどんどんやるべき、という合理主義者。
もちろん、神様なんて信じていないし、乱れた性生活を送ることに後ろめたさも感じていない。
逆に、性を利用して人生がよくなるのなら、それは素晴らしいことなので是非みんなやるべきだ──堂々とそう言い放つ女なのだ。
 もう長いあいだ友達として付き合ってはいるのだが、それでもまだ「どうして私と気が合うのだろう」と思うことが度々ある。

「で、身体の方はどうなの?」
「えっ? 身体って?」
「いやさ、結婚してる時はアンタだって毎日だったじゃない……。それが急に一人になって、それから五年も男ナシで……身体おかしくなったりしないの? ほら、疼いたり……。何? 禁断症状ってヤツ? ないの?」
「そ、そんなのある訳ないじゃない。別に人間はセックスしなくても死んだりしないわよ……。まぁ、陽子の場合はどうか分かんないけどさ……。あ、それに……、ちょっとそういう気分になった時は自分で鎮めてるから……」
「へー、そうなんだ。ちゃんと自分でヤッてるなら大丈夫か……。道具とか使って?」
「ど、道具? 道具って何よ。そんなの使わないよ!」
「なんだ、じゃあ指でだけ?」
「うん。だってそれで充分じゃない?」
「えー、充分じゃないでしょー。全然充分じゃないでしょー。一人でヤルならせめて道具ぐらい使いなさいよ。買うの恥ずかしかったらプレゼントしてあげよっか? 私ぶっといヤツ持ってるよ?」
「い、いらないわよ! 貰ったとしても使えないよ……。あんな形したもの……」
「──彼に悪い気がするから?」
「うううぅ……」

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