幼妻のアブない日常 183
ここまでフレンドリーになったから黙っているのが申し訳ない気持ちになるけど、いつか笑顔で打ち明けられたら良いと思う。
「本番入ります!」
スタッフの掛け声で仕事モードに切り替える。
私の両隣には2人の男性アナ。
玲奈さんとエンタメコーナーを仕切るベテランの岩田茂さんと、新人の工藤賢人さんだ。
幸い二人とも特定の球団や芸能人に肩入れしてないので、主張がぶつかる心配もない。
それとなく、収録前にどちらにも胸が天然か聞かれた。インテリらしく露骨でなく、番組でそんな話題になった時にどうするべきかというオブラートに包んだ感じだった。
教わった通り、さりげなく動作を合わせ、カメラの動きを見逃さずにパンチラを防ぎつつ足を綺麗に見せるように膝や足首の位置を意識する。
幸い、衝撃的な事件やリアクションに困るニュースもなくスタジオで無難にこなせた。
「届いてるFAX見てみてみる?結構好き勝手なこと言ってきてるけど、知名度に比例すると思って」
「はい」
私に対しては男性からのメッセージが多く、深夜枠の方が良かったとかおっぱい担当とかビキニ姿で出てという的はずれながらこれまでの番組の視聴者と違った層も注目してるとわかった。
「あなたの影響力に期待してるわ」
「玲奈さん」
「来週からは現場ね。温泉とかお祭り、視聴者が楽しみにしてるわよ」
「今度カレンダーの撮影あるんですけど、結衣子ちゃんが入ったから、今回は水着らしいですよ」
「それじゃ、結衣子ちゃんにポーズのコツとか聞かなきゃね」
「千夏にも、今度の企画について教えてあげないと」
玲奈さんと玲奈さんが頼ってくる。どこから漏れた情報か知らないけど、女子アナの人たちが企画とは言え反発しないのはさすがプロだ。
退社してフリーになった人が水着で写真集を出すのなら以前あったけど、玲奈さんや雪菜さん、千夏さんたちはれっきとした局アナだ。
上層部の方々も承認したのだろうか。
「水着といってもおとなしめですかね?セクシー担当は私の役目…」
「ふふ、これでも千夏は脱いだらすごいのよ」
お堅い業界と思っていたのに、全員乗り気で逆にこっちが面食らいそう。スポーツ選手のインタビューのときだけセクシーな服装にして婚活する人たちと思っていたけど、よく考えたらミスキャンパスを経験したり宣材写真でもスリムさやグラマーさを誇示する一面もあるのを忘れていた。
「で、どんな水着なんですか?」
「私達のは古臭いの。白のストラップレスワンピース、局のロゴが入ってるハイレグ」
「私達って?」
「結衣子ちゃんは本職のプロだから、当然ビキニ。色はおそろいだけど」
局アナの人たちの衣装はなんだか昔のレースクィーンに近い。私は水着カレンダーの目玉なのかやっぱりビキニだ。