*果実* 柚子編 《第二章》 9
ド・ド・ド・ド・ド・ド…
「お兄ちゃんの心臓の音、耳を当ててないのに聞こえる。」
「うん。」
柚子の鼻が時折スンスンと音を立てる。
鼻をすすってるわけでなく、匂いが気になるみたいだ。
まるで子猫や子犬のようだ。
生まれて間もない、ようやく目があき始めた猫を抱かせてもらったときを思い出す。
俺の右掌に収まって寝こける子猫。
そこでフと考えがよぎる。
(ここで軽く握っただけでこの子は簡単に。)
残虐的な考えが浮かぶが、そんなことはしない。その反面『守ってやりたい』と『可愛いから意地悪してやりたい』と思い、指先でお腹をくすぐって安眠を妨げてしまった。
今の柚子も小さくか弱くかわいく、『守ってやりたい』と『可愛いから意地悪してやりたい』が浮かぶ。
「こうしていると本当に可愛いな。」
「ん?」
埋めていた顔を少し上げて俺の顔を見上げる。
俺はポケットから携帯を取り出して操作する。
「昨夜の乱れ方がウソみたいに可愛いよ。」
そして柚子の携帯から俺のパソコン、そして携帯に送信した柚子のおしり丸出しの画像を見せた。
ぎゅぎゅぅ〜っ
俺のシャツを握る柚子の手がきつくなる。
そして顔が耳まで赤くなる。
思考と体が漸く繋がったようにバタバタと右手が俺の携帯を奪おうと暴れ出す。
簡単には渡さない。
俺は携帯を持ってる手を高くあげて柚子から携帯を離す。
時折柚子の手が俺の顔にぶつかる。
ムキになる柚子の上体が俺にのしかかってくる。
そこで俺は体を巻き込むようにひっくり返す。
「きゃあぁ!?」
柚子の体がベットの上であおむけになり、その上に俺が覆いかぶさる体制になる。
「あ…。え?っと、お兄ちゃん?
じゃなくて、なんでそんな画像があるの!?」
「可愛かったから、つい…ね。」
「ついじゃないでしょ!
返して!じゃなくて消して!」
「や〜だ」
俺携帯を柚子のおでこの上で揺らして子猫をからかうように取られそうになるとヒョイと避ける。
ネタがネタだがこうしてると本当に可愛いもんだ。