彼女はスーパー小学生! 12
2人してそんなことを言う。
それを聞いた有紗はため息をついて、あきれ顔。
「いつまでたってもそんなんじゃ、悠が独り立ちできないじゃないの」
「それは必要ないよ。悠くんは私たちがお世話するんだもん」
「そうそう」
「それじゃ逆でしょ…将来は私たちが悠にプロデュースしてもらうんじゃないの?」
「悠くんなら大丈夫だよ」
リズが言う。根拠はなさそうだけど自身はたっぷりの様子。
「だから、悠くん、はい、唐揚げだよー」
「卵焼きもねっ」
ティナとリズが僕にお弁当のおかずを差し出す。あーんして食べてほしいようだ。
有紗は冷たい目で見るが、ティナとリズのニコニコしながら迫ってくる圧も凄い。
一応叔母と姪の関係だけど、姉妹のように仲の良い2人はこう言う所は良く似ている。
そして僕の方は・・・
圧に負けた。
口を開けて、それを受け入れる。
これもいつもの事で、みんながこれをやりたがるし僕が最終的に負けるのも同じだ。
「嬉しい悠くん」
「いっぱい食べてね」
不思議な事に、こうして貰った方が多く食べれたりする。
普通に食べると多いお弁当も、こうして貰うと全て食べれる不思議だ。
勿論、沙織さんのお弁当はいつも美味しいのだけど。
「そうだ、有紗・・・ソーセージあるからあれやってあげて」
「何で私が!」
「じゃあ私達だけで悠くん独占しちゃうよ」
残ったオカズのソーセージ。
僕の好物でもあるソーセージ。
それであれをって事は・・・
そして、有紗も2人の圧に負けたようで・・・
箸でつまんだソーセージを口に咥えて僕に顔を近づけてくる。
なんだかんだ言いながら、やってくれるのが有紗の可愛い所だ。
「はーい、悠くんもパクッといっちゃえ!」
ティナが僕と有紗を煽る。
こういう流れも嫌いじゃない。お昼ご飯の時間によくあることだ。
有紗の反対側からソーセージを咥え、ゆっくりゆっくり顔を近づけていく。
有紗は瞳を閉じてその時を待っている感じだ。
ならば僕は大胆に有紗と接近していく。
「!!!」
有紗が大きく目を見開いた。
有紗と僕の唇が重なる。
咄嗟に離れようとする有紗だが離れられない。
何故なら僕の後ろにリズ、有紗の後ろにはティナが居て、僕達が離れないように押さえているからだ。
「有紗ったら、素直にならないと・・・」
「悠くんのお嫁さんから外れちゃうよ!」
ニコニコと言うか、それを通り越してニヤニヤになってる2人。
何とか脱出した有紗が大きく息をしながら怒る。
「こんな事しなくても、私は悠のお嫁さんだから!」
うん、何て言うか凄くツンデレ。
そこが有紗の可愛い所だけど、ティナやリズはツンデレに理解が無いんだろうなと思う。
2人共それぐらい素直に感情表現する方だし、それが彼女達の伸びやかで表現力豊かな歌唱力に繋がっているんだと思う。
「お嫁さんならキスぐらいするものだけどねぇ」
「そうそう、リズは悠くんにハグもキスもたっぷりしてあげるからね!」
そう言うとリズは僕をギュ―と抱きしめ唇にキス。さらにもう一度キス。背後からはティナがハグしてきて僕はサンドイッチされる格好。それを有紗が顔を真っ赤にしながらも冷ややかな視線(のつもり)で眺める。
「もう、甘過ぎよ」
「そんなこと言っちゃって、有紗、羨ましいって思ってるでしょ」
「ぜ、全然!!」
プイ、とそっぽを向く有紗。
普段はツンツンしてるけど一度舞台に立ったら正統派アイドルになるのが有紗のすごいところだと僕は思っている。