ヒメゴト。 36
俺は紅茶を入れたティーカップを可憐の前に置くと、隣に座り可憐の頭をポンポンと優しく撫でてやった。
「せんせぇ…」
「可憐、お前が頑張ってくれたからだぞ。怖かっただろ、ずっと暗い部屋に、おかしなヤツのところに閉じ込められてて…俺たちが来るまで、良く我慢してくれたな…」
「せんせぇ…それは…せんせぇたちが、絶対、助けに来てくれるって信じてたから…」
ウルウルの瞳でそんなこと言われるとこっちだってもらい泣きするだろ、ちょっとやめてくれよ…なんて言いたくなるが、もちろん言い返せない。
いや、そこで言い返すのは間違いだ。
「ありがとな、可憐」
俺は可憐の身体を抱きしめ、頭を撫でる。
「せんせぇ…せんせぇ、大好き…」
「可憐…」
小さく聞こえたその言葉に、俺は胸の詰まる思いがした。
「可憐…俺も、可憐のことが好きだ」
「せんせぇ…」
「お前の傍にいたい。お前をこの先ずっと守っていきたい。だから…」
「せんせぇ…」
可憐の手が俺の背中に回った。
「嬉しい…」
可憐の瞳に溜まる涙…そこから零れ落ちるのを、手で拭ってやる。
「せんせぇ…」
「俺も、可憐のことが好きだ。この世で一番、な」
「嬉しいです…」
…一回りくらい年上で、お前から見たらおっさんかもしれないけどな
「全然そんなことないですよ」
「人の心を読むのはやめないかな」
「せんせぇ、はっきり言ってましたよ」
可憐の顔に、すっかり笑顔が戻っていた。
これが、俺が一番見ていたい可憐の顔だ。
正直、心の底からホッとしている。
「本当に、俺でいいのか?」
「せんせぇ以外に、好きな人なんて…いないですから」
「聖羅やエリカや麗華は?」
「男の人に限ってはの話です!」
ニコリと微笑んで言う可憐。
その身体を抱きしめ、唇を重ねる。