ヒメゴト。 16
翔太にビールを注ぐ。
「いやぁ…ホント久しぶりだな」
「ああ、成人式以来かな?」
「翼はどうよ?彼女とかいないの?」
「うーん…この間別れちゃってね…」
「そうか…」
スーツでビシッとした姿の翔太は真面目ないい男の雰囲気が出ている。
生徒から慕われているいい教師なのだろう。
「翔太は順調そうでいいよなぁ」
「いいことばかりじゃないよ…嫁さんが妊娠中だからさ…」
「え、2人目生まれるのか?」
「ああ…この前わかったんだ」
「へぇ、おめでたいじゃないか」
翔太は笑いながらも、どこか物足りなげな表情を見せる。
…お前も男だな。奥さんとヤレねーよってことか?
「そういえば、中学の先生だったな」
「ああ、今は2年生の担任だ」
「どうだ?お前ならいい先生やれてると思うけど」
「ああ、まあ、な」
翔太が今勤めてるのは西之森中…あれ?
確か、可憐たちの通ってる中学じゃなかったかな…
「そういや翼、お前って今塾で講師やってるんだよな?」
「あ、ああ…そうだけど…」
「俺んとこの学校の生徒もいるだろ?」
「あ、あー…そこまで見てないなぁ」
「ウチの中学は可愛い女子がたくさんいるぞ。今俺が担任やってるクラスなんて特にさ」
「へ、へぇ、そうかぁ…」
…いや、まさか、そんなことはあるまい。
単なる偶然だろう、このとき俺はそう自分に言い聞かせていた。
…週末
学校が休みのときは、午前中から授業を始める。
この日の1限目の開始は10時。
当然、可憐たち4人も揃ってやってきた。
「おはようございます、先生」
笑顔で挨拶してくる可憐と麗華。
本当に可愛いものだが、先日、翔太の言っていたことを思い出す。
可憐たちは本当に翔太の教え子なのだろうか。
それだけならいいが、まさか…
「センセ、おはよー」
小柄な2人の後ろから現れる長身の聖羅。
「おう、今日もおそろいだな」
「センセ、私も忘れないでよー!!」
後ろからいつもどおりのでかい声でエリカもやってきた。