PiPi's World 投稿小説

地球卵
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 53
 55
の最後へ

地球卵 55


チュッ!

試合前にしてくる、いつものキス。
このキスをしてもらうと、不思議と進一の不安が薄れていく。
まるで勝利を信じて疑わない、カレンの自信を分け与えられたかのように。
そして2人は試合会場に向かうべく、控え室を後にした。

――――

Dクラスとは言え、金曜日ということでそこそこの客の入り。
そんな中、審判兼進行役のニンフ人が着々とプログラムを進行していく。
すでに選手入場を済ませたカレンは、余裕の表情で相手の顔を眺めていた。
今回の試合は打撃戦『シュート』ルール。
対戦相手も勝率はそんなでもない。だからカレンの余裕もわからなくもないのだが・・・。
この対戦相手、少々・・・否、かなりタチが悪く、劣勢になると何が何でも勝とうとして反則を繰り出してくるのだ。
それが原因で反則負けしたことは数知れず。
進一は危険極まりない相手を前に、カレンの無事を祈らずにはいられなかった。

(カレン、負けてもいいから大ケガだけはしないでくれよ―――!?)
ゴングが鳴って試合が始まる。
相手は反則云々は別として、かなりスピードがありそうな選手で、フットワークが相当軽い。
対するカレンは、どちらかと言えばどっしりとした構えだ。
ガードを構えながらカレンが間合いを詰めると、相手は前蹴り・・・
カレンとの間合いを離してステップを踏む。
もう一度、詰めようとすると再び前蹴り。
今度はカレンが強引に前に出ようとすると、ローキックで動きを止めてきた。
相手は徹底したアウトレンジ戦法のようだ。

徹底した相手のアウトファイトは、インファイターのカレンには苦手な相手だ。
彼女が得意とするのは、右のフックと膝蹴り・・・破壊力抜群で一撃KOもありえるが、間合いが短い為に間合いに入れない相手は苦労する。
反則ばかりに目がいきがちだが、この相手は意外にもスピードがあって上手い。
カレンからすれば相当な苦戦で、開始から1分程は相手にいいようにやられていた。
一方的に見える展開だが、カレンは非常に冷静だった。
嫌と言う程喰らっているが、ダメージが思ったより少ない。

そして。調子に乗った相手が右ストレートを不用意に放ったその時。
冷静だったカレンの目が、獲物を狩る獣のそれに変わった。
相手の右ストレートに合わせ、カレンは渾身のクロスカウンターを敵の顔に向けて放つ。
肉と骨がぶつかる嫌な音が響く。
次の瞬間、カレンのカウンターを食らった相手は、前のめりにリングに倒れこんでいた。

ウオオオォォォ・・・ッ!!

一気に湧き上がる歓声。それにカレンも応えるかのように右手を掲げることで、観客はさらにヒートアップする。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す