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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 9

時を同じくして、当のアインは流星のバイト先で面接を受けていた。

「ガタイもいいし日本語はペラペラ、字が書けねぇ程度はご愛敬って奴だ!」

豪快親父そのものな社長の前で、流星が出鱈目な履歴書をデッチ上げている。
その間、アインはチラシ裏に名前だけでも書ける様にと練習していた。
アイン・シュタイン、と社長の思いつきで考えたフルネームの偽名である。

「気にすんなニイちゃん、どんだけ出来てねえ奴だって、使い道があらあ。」
「シャチョーサン、僕がんばります。」

と、アイン・シュタイン(偽名)は流星から教わった通り適度な片言発音で社長に会釈する。
異世界からの救世主、まさかのガテン系デビュー、仕方あるまい大真面目な話だ。

世知辛い話、中二パワー全開の異世界人だって腹は減るし、ただでさえ星見崎家の居候という身分。
地球征服を目論見ながら富豪の令嬢を誑かし、ワイングラス片手スーパーニートを満喫する侵略者とは違うのだ。

それにアインの知る地球の文化と言えば他の次元跳躍者から聞きかじった程度、一分一秒早く地球の環境に馴染みたかった。
例えばこの通り、会話や文字の解読はテレパシーの一種でどうにかなっても、筆記までは無理だったりする。

「兄貴、何歳?」
「十七歳だ。」
「姉貴と同い年か、誕生日は昨日でいいよな?」
「それでいいかな、生年の方は逆算してくれ。」

流星はこれまた出鱈目に中学校名…いやジュニアハイスクール名をデッチ上げて履歴書に書き込む。
しかし免許資格の欄を見てアインは青くなった。

『作業用ロボット操縦』

あまり目立った真似はしたくない、どこにでもいるドカタのガイジンで済ませたかった、しかし何の悪気もない流星と喜色満面な社長…。
駄目だ、この優しい地球人達の期待を裏切れない、ノーと言えない異世界人アインであった。

程なくしてアインは会社のガレージで全高十メートル程の巨人…作業機のコックピットに収まっていた。

神装機パイロットの訓練に使われる旧式の装機(ロボット)と操縦は同じ。
というかアイン以前の次元跳躍者達が路銀に困ったり、地球側協力者との交渉材料で異世界技術を地球に売り飛ばしたそうな。
元の世界では結構な騒ぎだったが、こうした作業用重機や旧式軍用機の範囲内。
そして不幸中の幸い、地球の技術で軍事転用しても威圧以外のメリットが低かった為、問題なしと判断されていた。

先日、星見崎家から持ち出した雑誌の記事でも似たような話があった。
自業自得というべきか、欲を出して作業機の軍事転用を試みて失敗した挙げ句に会社は倒産、担当者が失踪した事件。

笑えない話だ、アイン自身アハトレーダーを使って地球に来たのはリィトの仇討ち、私怨による独断。
テロリストであるゼイルを逮捕ないし抹殺出来なければ死刑か終身刑、いや出来たとしても何かしらの処分を受ける。
自分だって既に執行官として不正の数々を働いて後戻りは出来ないのだ。

「気ぃ付けろよアンちゃん!訳のわからねぇ寄せ集めのポンコツだからなぁ!」
「馬力だけは自衛隊ロボットに負けねぇジャジャ馬だけど!兄貴ならやれる!」

だがせめて今は、こんな人達の笑顔を守りたい。

「安全確認っ!発進っ!」

フニョーン、ぽぴー
「あ、駄目だ」
ポンコツは数歩進んでへたり込んだ。アインの腕が悪いわけではない。
全てが寄せ集めなせいで全体のバランスが取れていないのだ。
ジェネレータはローズ社、右腕の作業用アームはグリーン・タワー社のs1の初期モデル…。
これらが噛み合えばどうにかなると思う、軍用にさえ出来るだろう。
「駄目な部品を半壊したアハトレーダーの部品と入れ替えて見たらどうだろうか?」
ふと浮かんだ妙案だったが、試してみる価値はありそうだった。
アインは「再調整」という名目でポンコツを空き倉庫に動かした。

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