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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 10

マトモな歩行が出来ない為、とりあえず機体を屈ませて足周りをロック。
足裏と踵の補助キャタピラを微速前進で駆動させ、倉庫の端まで移動した。
そしてアインは操縦席にアハトレーダーだった物を召還する。
別に冗談ではない、元々半壊していたボディは無理な次元跳躍で大破。
はっきり無傷とわかる部品は掌に収まる程のコアユニットしか残っていないのだ。

「ごめん、無理ばっかさせて。」

金属とも結晶ともわからないキューブ型の塊、それは力なく青白い燐光を放っていた。

「半休眠状態…だが仕方ない。」

現状の消耗したコアユニットでは、搭乗者の精神エネルギーを増幅して動く、神装機クラスを制御するには足りない。
だが電気と内燃機関で動く単純な機体、しかも地球製デッドコピーの制御補助ぐらいには十分だ。

元のメモリースティックを抜いて、そこにアハトレーダーのコアユニットを挿すだけ、なのだが。

「おい…我慢してくれよ?」

コアがイヤイヤと振動するも構わず挿入を試みたアインは思わぬ反撃を受ける。

「痛っ!熱っ!ゴメン!ゴメンって!」

一文無し甲斐性なしのご主人様を責める様にコアがアインの手元でスパークを起こす。
それでもどうにか折れてくれたか、ハイハイわかりましたよ!とばかりキレ気味な燐光を放ってから、部分的に変形しコネクタ部分に挿さる。
そしてモニターに、アハトレーダー(のコアユニット)からの短いメッセージが表示された。

『ヘンなとこに挿れられた』
「誤解を招く事言うな!」

それでも機体制御は落ち着いている、何かとお上品ぶって口うるさいが『彼女』は色々と割り切れるタイプなのだ。

彼女…アハトレーダーのコアユニットはアインの意図を読んで、この寄せ集め作業機の不具合をOS側から補正値を加えて対処していた。

先程まで常にエンスト気味の異音を発していた、ディーゼルと電気モーターのハイブリットエンジンが軽快な唸りを上げる。
歩行どころか直立さえ不自由していたオートバランサーや手足の動きも同様、生卵を割らずに掴んでお手玉遊びすら出来そうな安定感だ。

アインはアハトレーダー(のコア)が挿さっている隣のスロットに元のメモリーを挿し、彼女が調整した適正数値を記録する。

「ありがとうアハト、埋め合わせは必ずする。」
『あ…いや…だめ…抜かないで…』

アインはアハトレーダーの卑猥な冗談を無視してそいつを引っこ抜き、元の異次元ポケットに収納した。

神装機のコアユニットは地球にとってオーパーツ、みだりに人前に出すのはまずい、あくまで今回は調整にとどめた。
後々整備の合間を見て目立たない範囲、他にもアハトレーダーから使える部品を移植してやろう。
アインと作業機が社長の前に戻った所、試運転がてら明日の現場で使う資材の積み込みを命じられた。
アインは作業機に『ドーモドーモ』なポーズまで取らせて作業に移る。

「うんうん、三百万払った元を取らせて貰えそうだ、ウチだってロボ使って見栄はりてぇしな。」
「つーか社長、フツー三百万あったらコ○ツ辺りのユンボとブル買って釣り来ますから。」

正規の作業ロボットは中古でも数千万、人型の汎用性は以外と低く、宣伝用のオモチャ要素が強い。
有限会社レベルで堅実な経営者だったら、流星が言う選択を取るべきだ。

しかも先程までの状況からして、竹尾社長は本当にお飾り同然のガラクタを掴まされている。

「長年のカンって奴よ、あの兄ちゃん入って結果オーライじゃねぇか。」
「ほーほー、さすが小学生の頃から社長やってるだけありますなー。」

笑って誤魔化す竹尾社長を流星は容赦なく茶化しつつ、肝心要の本題を切り出した。

「ほんじゃ兄貴の日当も弾んでもらわにゃ、一万五千。」
「馬鹿言っちゃいけねぇ、国籍不明の未成年だろ、操縦手当込み一万。」
「それでしたら整備までやってますがね、一万三千。」
「ぐぬぬ一万二千でどうよ?これ以上は出せねぇからな!」

そこでもう一声と流星が食らいつき、お人好し商売下手の竹尾社長は日当一万二千五百円でアインを雇い入れる事となった…。

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