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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 7

ー星見崎家・リビングー

「うん…あんだけ不思議パワー見せつけられたら日本語堪能な外人の手品師で変態とか…ないわ。」

弥生は夜食の蒸かし芋を三人分こさえながら、ブツブツと独りごちる。
何もない空間から私物を取り出す能力に種も仕掛けもない事は納得していた。
たまたま再放送していた古いアニメ、ツウテンカイザーを見ながら錬金術の応用で、台所の不燃ゴミからソフビ人形までも錬成して見せた。

アイン(仮)の本業は帝都の新任執行官とやら、犯罪者を追って半壊したアハトレーダーとやらで無理にこちらへ来た為に不都合がどうの…。

「大変そうだけど?どんだけテンプレ設定?色気ある話とかないの?」

そうして弥生が火を止めて蒸らしに掛かった辺り、タオルを首にかけた流星が風呂場に向かう。

風呂に向かう流星の背中を目で追うついでにとりあえず、アインは部屋を観察した。
とにかくオンボロだ、そして至る所に紫のレザーに身を包んだ狼男の絵が貼ってある。
その狼男の着ている服は、どことなくアインの黒いレザースーツに似ていた。
親近感を感じた、きっと弥生も悪い気はしていないだろう。口ではボロカスに言ってはいるが、本当に通報する気は無いのかも知れない。
(ワーウルフだとかそんなのが好きなのか?)
アインはそこらに落ちていた雑誌の1つを手元にやった。
後で読もう、こちらの世界情勢かなにかが分かればいいのだが…。
比較的日付の新しく社会人向けのそれ、ギャグ漫画ならうっかりエロ本といった所だが、ちゃんとそれらしい物を選んでいた。
流星が工事現場の詰め所から持ち帰ったであろう、砂埃にまみた一冊を不思議空間に納め流星の部屋を出る。

「兄貴ぃいいい!一緒に入ろうぜぇえええ!」

そこへ流星の声、当然の如く風呂場の方からだ。
こうした状況、家長である弥生に断りを入れねばなるまい、そして家捜ししていた事に気付かれるのも気まずい。
いやそんな心配はなかったが別の心配が発生した。
ヘブン状態な表情の弥生が台所から出てくる、これは予想外だ。

「弥生…流星はああ言ってくれているのだけれど…。」
「グッジョブ!」

遠慮がちなアインに(;´Д`)ハァハァしながら弥生は親指を立てて見せた…。

「という訳で水道代ガス代節約の関係、明日からは男子二人で一番風呂してね?」
「あんだよぅ…いつもは姉が家長でどうとか…うん!まぁいいか?」

貧乏姉弟がそんな遣り取りをしながら、蒸かし芋とスーパーの半額総菜で夜食。
何故アインの分だけ兄貴は精を付けてとばかり焼きニンニクが、そして流星の分にはホロ酔い気分で兄貴に甘えちゃえ、とばかりカップ酒が付いているのだろう。
アインも流星に倣ってまあいいか?と済ませる事にしたがちょっと待て、弥生は確かに今『明日から』と言った。

「明日から、と言ったのか、弥生。」
「うん、本音は弟に兄貴が出来てキャッキャウフフ、そんな絵面を面白半分で見物したいだけ。」
「さっすが姉貴!よくわかんないけど!そこに痺れる憧れるゥウウウ!」

さながら渡世の仁義とばかり、アインが使命を果たすまでの間ここに居て良いと、そんなふうに聞こえた。

「何から何までタダって訳には行かないけどガタイいいし流星んとこで、ね?」
「明日オレのバイト先来いよ?どうせ貧乏ヤンキーとビザ無しの外人ばっかで…」

持たざる者故の優しさに、アインは涙が溢れて止まらなかった、今までにない経験だ。

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