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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 44

その育ちの良さそうな人物は彼なのか彼女なのか、場にいる人間は周知なのだろうが外観からの判別が難しい風体であった。
ゴーグル型のヘッドアップディスプレイが顔半分を覆い、耐圧服の様なパイロットスーツに付随した防具や緩衝材その他機材で体格もハッキリせず、性別は推測し辛い。

しかしただ一つ言える事はその黒いパイロットが、どことなしレガート貴族や軍の関係者とは別口の雰囲気を持っている、つまり余所者。
かと言って流れの傭兵やPMCの類とも違う、軍事ロボ業界の技術屋兼業テストパイロットともまた違う。

更に同じ余所者よそよそしい扱いでも『遠方から訪れた客分』として、それなりの高待遇で扱われている様子があった。

しかし待遇が良いとはいえ、しょせんは余所者。
レガート本部に完全に心を開いている者は居なかった。全員がビジネスか観察対象として接している。
それは当然の事ではある。唐突に現れた異世界の人間に不気味な感情を持つな、という方がどうかしている。
優遇されているが完全な孤独。その異常な状況が破壊願望と自己顕示欲を呼び起こしかける。
しかし、その人物はそれを適切に押しとどめていた。ゼイルと違って。
自らに備わっている欲をコントロール出来たのは本人の性質の要素が大きい。だが、それ以外の理由もあった。
探している人、の存在だった。
全く知らない場所、帰る方法すらも分からない…という悲惨な状況でありながらその精神的支えがそのパイロットをの心を平穏に保ってくれていた。
目標があるという事はここまで人生に響いてくるのか、とそのパイロットゼイラアは思う。
しかしゼイラアはまだ知らない。異世界にも居場所が無いという事に。
ゼイラアは異世界からここに飛ばされてきたと思っているが、そもそも異世界に存在していない人間なのだ。
ゼイルの存在が中途半端にコピーされ、実体化させられたのがゼイラアだ。
それは偶発的な事故なので、本人どころか誰も知る者は居ない。
誰もが異世界からやってきた客人だと思っている。
実際に異世界の技術カターリナカスタムと共に現れたのだからそうレガート派が推測してしまうのも無理もない。

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