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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 34

優勢なのはカターリナと似た型式の三機、地球製としては高性能な上に技量も高い。
初弾ミサイル攻撃で三機撃墜し陣形を内側から崩しにかかっていた。

「猿にしてはセンスのいい連中もいる様だな。」

ダイダイオの見立て純正カターリナに比べ小柄で重心を落とした機体形状。
ホバー移動の最高速度が遅いのもまた地球製OSで安定感を保つ為だろう。

劣勢側も一応純然たる人型の機体だが高出力な割に不安定で鈍足な機動。
運用技術が足りないにも関わらず無理に人型やホバーを採用して失敗する典型と見た。

カターリナのデータベースでは双方同じ国家で敵対勢力同士と解った。
鈍足機の勢力が何かしらの画策でテロ作戦に便乗、カターリナ系の勢力が妨害に入ったのではないか。
貴族社会の裏側で揉まれたダイダイオ、狂ってはいても切れ者であった。

ダイダイオは身を潜めながら無事な機器を駆使し解析を続ける。
優勢側のカターリナもどきがタルラホーン、鈍足機がドリザルというらしい。

一機のドリザルが無駄にホバーを噴かし地に足も着かず25mmサブマシンガンを乱射していた。
対して隊長機らしき塗装のタルラホーンは、ドリザルの正にザルの様な防御弾幕をすり抜け、射撃反動とホバー制御を計算に入れた反撃。
装機用ハンドガンとしては大口径な35mm砲弾が一撃でエンジンを撃ち抜く。
そして減速もせず左手に曲刃短剣ジャンビーヤを閃かせ、大太刀シャムシールを振りかざすドリザルと切り結んだ。
超合金ブレード同士の火花が散った刹那、タルラホーンの刃が滑りドリザルの手首内側、次いで脇腹の動力ケーブルを切断。
更に金的狙いの膝蹴りで股関節を破壊、足腰立たぬドリザルを一別。

見事としか言いようがない。
だが、やはり当初の数の差が響いてきたようだ。
奇襲による混乱が収まるとタルラホーンは少し押され始めた。
ドリザル8は密集隊形をとり、守りを固める。
そして、孤立した一機のタルラホーンに銃撃を集中する。
無数の弾丸が回避の遅れたその機体に殺到して、たちまち弾痕に覆われた。
ボゥン
銃撃でズタズタになったタルラホーンは小爆発を起こし、その場に倒れ込む。かろうじて人形は保っているが基礎が完全に破壊されていた。
動きの良い隊長機ですら無傷というわけにはいかなかった。装甲の至るところに至近弾による損傷が見られる。
もう一機も頭部が歪み、左肘から先が消失していた。
「いくら腕が良くても戦力差があったらどうにもならない、か…」
ダイダイオは感想を述べた。
「せめて狙撃用のライフルがあればもう少し数が減らせただろうが…他国では用意も出来んか」
しかし、戦闘が泥沼に陥り出しているのは都合が良かった。
どちらが味方かわからない今、双方が消耗してくれた方がやりやすい。
敵を全滅させた陣営が今度は真っ直ぐ自分を狙ってくる可能性が高いというのもあるが、戦闘が激しいほど2機の注意を引いてくれるからだ。
ダイダイオが武器調達のついで応急修理で一般機から首をすげかえたカターリナ、頭だけ緑で屈んだ姿は本当に柑橘の様な機体だ。

通信内容を傍受すると、やはりドリザル側は自衛隊襲撃側の気配がある、つまり敵の敵は味方だ。
タルラホーンと類似したこの機体で彼らの前に出ればややこしい話になるだろうが、このドサクサで逃げ出せば問題ない。

追撃の手負い狼と雌ゴリラが幾ら手練れでもポンコツ機。
対して練度は今一つでも火器持ちのドリザル五機相手には手こずるだろう。
どれだけ武道や喧嘩が強くても本気でマシンガンをブッ放されたらそうそう勝てない。
あのタルラホーンの隊長機がいい見本だ、味方を庇いながら悪足掻きを続けるぐらいしか出来ない。

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