PiPi's World 投稿小説

神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 21
 23
の最後へ

神装機伝アハトレーダー 23

センサー類にも散弾がかすめノイズが入る、折角ガトリングガンの射程内に持ち込んだ矢先の損傷。
それよりも反撃の機を削がれた事の方が危険である。

幻惑から覚めたドゥティはラデンのCPUにダメージコントロールを命じる。
動作不良回路のショートカットが必要な右腕とガトリングガンより先に、ダメージの小さいセンサー類が復旧して女の機体を捕捉する。
高笑いする髑髏の様な頭部、灰色系の都市迷彩で両肩には蝙蝠の翼と似た黄色い紋章。

「どっちつかずの蝙蝠か、陰険女らしい機体だのう。」

ゴールデン・バット弐式…通称バット。
異世界の中立勢力が開発したゴールデン・バットの輸出仕様である。
陣営や派閥どころか異世界か地球かも問わず、各勢力の垣根を越えた技術交流の結晶たる高級汎用量産機。

そう呼べば聞こえは良い。

コスト度外視の汎用性能と高出力に加え金色の特殊装甲。
上位の装機歩兵どころかオーダーメイドの装機騎兵に相当。

問題は一般兵や輸出向けに特殊装甲を省かれその他ダウングレードされた機体。
オリジナルに劣るも高級量産機の扱いながら、何かと『どっちつかず』のスペック。
そして陣営を問わず輸出され、単独ないし少数で活動する工作員の定番機という扱い。

故にゴールデン・バットの姉妹機として正規にゴールデン・バット弐式と呼称される事は希。
ドゥティが漏らした『どっちつかずの蝙蝠』の揶揄、通称バットとされる。

バットの踵に装着された補助ローラーは、他の安価な量産機で二足歩行に不安があった機体の名残。
逆の発想、高性能な軽量級に用いれば更なる高機動を発揮、そいつが唸りを上げた。

さながらATかKMFか、鋼鉄のホイールがアスファルトを削り火花を散らす。
マネキン人形にも似た曲線美を持つ機体は、再び目眩まし代わりに散弾を放った後、ラデンのレーダー類から消える。

優れたトータルバランスに加えてステルス性能と対電子戦性能、どこから来るのかゴールデン・バットとまで唄われる。
あの女が駆るダウングレードのゴールデン・バット弐式。
オリジナルに出力と装甲が劣る通称バットでも例外ではない。
バットと相対するパイロットは目視か、ソナーや外部マイクの拾う機動音、さもなくば行動予測に頼る事となる。

ドゥティがいくら野性的な海の男ではあっても、クジラやイルカ程の感知能力を持っている訳ではない。
ようやく復旧した右腕とガトリングガンを構えた所、再びバットを見失う。

ドゥティは、直感とシミュレーションの経験を元に右斜め後ろにガトリングガンを向けようとした。
だが、上手くいかなかった。どうしても右腕の反応に遅れが出る。上部方向への誤差も出始めていた。
そのわずかな隙を回り込んでいたバットに狙い撃ちにされる。右側頭部の装甲が散弾を食らってめくれ上がった。
復旧したばかりのセンサー類がまたもおかしくなった。
ドゥティは一時的にガトリングガンでの攻撃を諦め、胸部内蔵型グランドナパームでの砲撃を仕掛ける。
手持ち兵装であるガトリングガンと違って細かな狙いは付けにくいが、威力はある。
逞しい胸板を連想させる胸部装甲を展開し、扇状に4発のナパームを打ち込む。
ここは地球対異世界として事前に仕組まれた八百長紛いの戦場。
不自然な程に迅速な民間人の避難誘導が済んでいなければ、人的被害も数百数千に至っていただろう。

バットの隠れ蓑となっていた建造物が半径数百メートル単位で炎上、倒壊してゆく。

ゴールデンでないバットの装甲は一般量産機に毛が生えた程度、故にこうした範囲攻撃のゴリ押しに弱い。
ドゥティは爆炎から飛び退くバットの姿を確認した。
バットは弾薬誘爆を避けるべく、簡単に消えない粘着油脂の炎にまかれたショットガンを放棄。
同じく機体ハードポイントの予備弾薬もパージしていた。
それもご丁寧にラデンのいる側に向かって、である。

「悪くない判断だ…が。」

散弾とスラッグの装薬、はたまた榴弾その他特殊弾の類が引火して炸裂する。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す