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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 22

砲弾が肩の一部をえぐった時、機体に埋め込まれた真珠層状の板がほのかに輝いた。
それと同時に脳に割り込んでくるイメージ。暗くイラついた様な女の顔…。
「なんだこの映像は!女か、女が撃ってきてるのか」
ドゥティは反射的に攻撃のあった方向にガトリングガンを向けた。だが目視出来なかった。
敵が移動していたわけではない。あまりに敵の射程距離が長すぎるのだ。
事前に手に入れていたサウスランドの武器性能データではありえない。誰か別の敵が居る…。
ドゥティの予想は当たっていたのだ。

幸い相手の武器の距離減衰が激しいので、一方的にやられるということはなさそうに思える。攻撃が遠すぎたのだ。
真珠状の装甲で攻撃が軽減出来ているというのも大きい。
ドゥティは片足を引き抜くと、ジグザグに動き回り相手との距離を詰める。危険だがガトリングガンではそうするしかない。
あえて遠距離から砲撃させて弾切れを誘うやり方も考えたが、味方と離れているこの状況で時間を使うのは良くない方法と感じ選択肢から外した。

「このラデンkの重装甲のおかげで自分の位置を知らせる結果になったようだな!」
ドゥティはラデンを走らせつつ(今度こそ地盤を踏み抜かない様に)、三発目を難無く回避。
あの女はラデンの重装甲を理解してか執拗にヘッドショットを狙ってくる。

「狙撃ライフルや機体固定武装の長距離砲の類でもない…ショットガンにスラッグ装填か。」

三発目で彼の経験と直感、そして機体の解析プログラムが距離減退を含む狙撃弾道の逆算を完了。
大体の座標を掴み以降の回避はより安易なものとなった。

基本的に射撃は近ければ当たり易く威力も上がるのは当然。
反面、移動目標を狙う場合近付くほど左右の射界が広まり、狙点の決断が難しくなる。
更にドゥティ側で敵側の射撃精度も見当が付いた以上、回避は容易なものとなる。
ただし相手の武装は狙撃銃の類ではなくショットガン。

「ちぃ…随分と嫌らしい女だ。」

例えばアサルトライフルやサブマシンガンのセミオート(単発)を狙撃銃と勘違いさせ、接近すれば勝てると踏んできた相手にフルオート(連発)弾幕という戦法。
それと似た使い分けはショットガンの場合でも可能。
弾種選択で近距離にバラける散弾のショットシェル、遠距離ならこうしてライフル弾もどきのスラッグ。
更に巨大ロボ(装機)基準ともなれば人間サイズのショットガンでは微妙だった他の特殊弾も射出可能だ。
あの女は特に先程から光学機器やセンサー類の集中する頭部ばかり狙っている。
接近すればまた何かしら小細工を仕掛けてくるだろうとドゥティは予測していた。
ラデンの重装甲でも弾幕や破片の一部が、頭部や間接など脆い部分に飛び込めば不味い。

ふと、先程の顔の幻覚が気になる。
真珠層の装甲が強烈な思念を増幅し、ドゥティの感知能力をも先鋭化しているという事にはまだ気が付いていない。
ドゥティの判断能力に問題があるからではなかった。
この板がそういう機能を発現させるという事はまだ誰も知らないのだ。

「貝の様にキラキラしていて格好良いし強そうだ」という簡単な理由で各部に埋め込まれたそれをパールアーマーとドゥティは呼んでいた。
正式な名前が無いのは発見者がドゥティだからである。

話は1年前にさかのぼる。
自称海の男であるドゥティはクレーンで妙な物を釣り上げた。
それは金属の様な多角形円盤だった。既にところどころ変色を始めていたが、それでも戦闘に耐える強度はあった。
実にオーガニック的だった。ドゥティはそこに魅かれた。まさに力強い海の男の為の装甲、と感じ取ったからだ。

そのオーガニック的なプレートをはめ込んだ右肩が爆発を起こした。幻覚の事で意識が散漫になり散弾をもろに受けてしまったのだ。
右肩は遠距離砲撃により軽くえぐりとられていた部分だ、よりによってそこに被弾するとは…運が悪いとしか言いようがない。
ひび割れたパールアーマーが戦場にぱらぱら散って、虹色に輝く。
電路がやられ、右腕が機能しなくなる。これで一時的にガトリングガンが発砲不能になった。

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