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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 21

市街地から元の基地(分屯地)内まで後退する陸自側の不利は機体性能だけに留まらない。

「グレネード…いや?せめて満足な弾数さえあれば!」

たまにしか弾がないのが自衛隊、有事にこのブラックジョークは洒落にならない。
彼らに与えられた砲弾はマガジン一本分、あとは固定武装の対人機銃と各自の拳銃。

市街地周辺で35mmライフル発砲許可だけでも大問題、オプション装備のグレネードなどもっての他、そこにもまた自衛隊側を不利に追いやる裏工作があった。

「何だよアレ!過激派の張りぼてロボに威嚇発砲して済む程度の任務って聞いてたのに?警察何やってんだよ!」
「二番機被弾…突貫します…妻と娘にパパは勇敢だったと…。」
「いやぁあああ?アタシまだ死にたくない!帰る!帰る!」

隊員達の間に動揺、いや絶望が浸食してゆく。

だが彼女は諦めない、各機の通信モニターに強制介入した隊長、伊庭渚3等陸尉。

「てめぇら!それでも金玉ついてんのかァアアア!」

雌獣の雄叫び怒号一喝、荒野を疾走る死神が如き大鎌の一閃。
捨身の突貫を試みようとしていた古株曹長の前で、一体のカターリナが両断され爆発四散する。

「命令だ!生きて帰れ!勝って帰れ!そしたら一発ヤラせてやるッ!」

相変わらずバカでビッチで野蛮人、だけど不思議なカリスマが漂う女。
何か吹っ切れた様に各機が彼女の大鎌と同じく、追加ハードポイントから試作品の様々な特殊合金の得物を抜き放つ。
古株曹長の大太刀、他の機体も両刃剣を戦斧を鎚矛を、様々な得物を掲げる。
カズくんミカりん(バカップル)の乗る予備機、標準型二機もまたライフルに銃剣を装着し皆に倣う。

「隊長、品位って言葉知ってます?」
「自分は妻子ある身、辞退します。」
「アタシWACなんで、そういう趣味ないんで、つーか隊長キモっ。」
「俺には…ミカりんしか見えません。」
「え?やだ?もう?カズくんったら!」

次々と部下達の軽口が返ってくる中、おねーたまオナシャスはひとつもない。
これが普段通り、彼女が指揮する部隊であった。
勝ち目がないのは解っている、伊庭渚は隊長機権限で各機の脱出装置を掌握し、ヤバいと思ったらすぐさま逃がしてやる準備を整えた。
渚も死ぬ気はない、最後の最後まで部下の無事を見届ける、それぐらいの技量と自信はあった。

「行くぞ!最低野郎共!地獄の底までついてこい!」

むせる。
泥臭く血なまぐさい戦いが繰り広げられる。まるでここはアストラギウス銀河系だ。
頭部に鎌を突き刺したカターリナが糸の絡まったマリオネットの様にふらついて、そして爆発した。
そのすぐそばではサウスランドが鉄塔に突っ込んで炎上している。
基地はもう壊滅状態だ。

一方その頃、雄臭でむさくるしい男は未だに基地にたどり着けないで居た。どこかからラデンk型を狙う砲撃があったからだ。
ようやく空自基地攻撃は実質無意味と気付き、部下達の身を案じ陸自基地へ向かっていたドゥティ。
最悪の場合はテレポート脱出後に機体データ保全で遠隔爆破、直属だけでなく新兵や有象無象のテロリストにも厳命していた。
戦力拮抗する状況それは厳守され、重傷者や死亡者が出ていない報告に安堵していた。

案外部下想いな彼の乗機、高級量産機に匹敵するラデンk型は大柄で重装甲ながら、高出力エンジンで機動性を確保する。
しかし機体重量の重さは変わらず、市街地で地下鉄や下水道といった類を踏み抜いてはまた出遅れ、こうして不意打ちまで食らう体たらく。
こうして一見間抜けな彼も歴戦の猛者、基礎工事の現場に片足がハマった状態から初弾を回避。
次弾はバイタルゾーンを避け肩の装甲で受け流す。

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