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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 19

紋章の女が異常なライバル心を燃やしている頃、ドゥティの習志野分屯地襲撃の準備は進んでいた。
メイド兼ゼイルの愛人であるミラが卯月に話しかけてきた。
「あんな無茶な作戦…、大丈夫でしょうか。私には上手くいくとは思えないのです」
「ドゥティは戦士だ。ただし、石器時代のな」
その台詞にミラはなんだかカチンときた。
「こいつ、なんの作戦も練られないくせにあの生意気な金髪の孺子みたいな事を言いおるわ!」
そんな怒りの叫びをミラはどうにか舌の上辺りで押しとどめた…。
本来なら無駄以外の何物でもなかった小規模テロ、そこへ卯月の提案で若干の軌道修正が含まれていた、故にミラも余計な苦言を吐かなかった。

分屯地付近の市街地を荒らし、当然の如く出撃してくる人型装甲車…陸自ロボ部隊との戦闘。
裏から手を回し陸自習志野駐屯地や空自習志野基地をはじめ、付近の陸海空自衛隊や米軍基地には手出しをさせない。
そこまでは同じ、卯月はマスコミを使った扇動をゼイルに提案し承認させた。

まずどこの部隊にも現場の判断を優先する指揮官や隊員はいる、遅ればせ支援する可能性はあるだろう。
仮に陸自ロボへの支援があろうとなかろうと、ドゥティが勝とうが負けようが最悪落とし穴に落ちて捕虜になろうが、何かしらの材料に使う。

『自衛隊が日本の国土を砲爆撃するな』
『だがやるべき時にやるべきだろうが』

憲法九条と国防の矛盾という、わかりやすい日本の弱点から不安と混乱を煽る。

味木が心配した通り日本だけでなく世界中がテロへの警戒を高めるだろう。
しかし関係者や賛同者がヤル気満々でもハト派の国民はたまらない、母国さえも疑う。
その数日後本命の地球全面攻撃、新たなる支配者にして侵略者ゼイルの光臨、緩やかな滅びへと向かう世界。

ミラはゼイルと床を共にするうち、洗脳抜きで彼へ淡く複雑な慕情を感じ始めていた。
必要ならこの卯月という、雇い主のお嬢様を始末してしまいたい程に、嫉妬を抱いていた。

ゼイルに近しい女としてだけではない、直接作戦を練る事こそなくとも、脇から進言しそれを通せてしまう卯月の才覚に、である。

全てを破壊する、そんな単純な思想しか持たないくせに脇から出てきては話を進めてしまう。
目障りだった。
それもこれもゼイルが卯月の破壊願望に賛同して組んだのだから当然の流れなのだが、洗脳で地球侵攻という目的を吹き込まれた彼女にはそれが分からなかった。
いわば、彼女の方がゼイルと卯月の間に後から割り込む形になっているのだ。

戦友と愛人、ゼイルにとっては全く異質なものだがその2つはぶつかり合い不穏な空気を漂わせ始めた。
どちらかを選べと強要されたらゼイルはどちらを選ぶのだろうか?
多分この男には選べないだろう、全くカテゴリが違うのだ。いきなり選べと言われても困るだけだろう。
その点、味木は楽だった。自らをダークヒーローに仕立て上げている彼にはそんな悩みの種が無い。

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