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神装機伝アハトレーダー
官能リレー小説 - SF

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神装機伝アハトレーダー 18

それは過度の可愛らしさアピールも目立たず慎ましい、挙動ひとつひとつが地味な女子力を醸し出していた。

それは地球人に化ける演技なのか、潜伏生活で自然と培われた立ち振る舞いなのか。
それとも彼女自身が持ちうる元来のスタイルなのかまでは解らない。
どこぞの中二病と腐女子と雌ゴリラは見習うべきである。

少なくとも公衆の面前でスカートをめくられ普通に激怒する程度の女性的要素は持ち合わせていた。

「(その話後々まで引っ張る気?)」

そんな事はどうでもいい、紋章の女本来の目的は未だ不明。
彼女は地球vs異世界に関わる場所を嗅ぎ付けるだけの手際を有していた。

転々としている間、興味深い少年を見つけた。
ゼイル逮捕ないし抹殺に失敗した挙げ句、恋人までも失った新米の異世界執行官、通称アイン。

地球言語では全く発音不能、異世界側でもやはり名前の発音が難しい辺境出身で『アイン』と呼ばれていた。
兎に角、彼は議会の承認も待たず大破した神装機を用い、何の下準備もなく独断専行で片道切符同然の次元跳躍を試みた。

「(事件は議会じゃない!地球で起こるんだ!って青島臭いにも程があるわよ。)」

かなり高い確率で失敗、永久に次元と生死の狭間を漂う程の大博打に彼は勝った。
更に何の偶然か異世界人に理解のある地球人姉弟の居候。
普通なら妙に日本語堪能な身元不明外国人として拘留か、ホームレス生活の後に野垂れ死にである。
紋章の女は訳アリで次元跳躍してはそんな末路に至る者を何人も見てきていた。
だからこそ彼の強運に興味を抱き観察の対象に加えたのだが、その不器用過ぎる手際の数々に失望していた。

もし仮に手際が良くても彼の立場ではやれる事は限られる。
その要因を考慮していない、公平性に欠ける過小評価だった。
色々な事に翻弄されてきたせいで物事に対する視野が狭くなっているのだ。
反発的な態度を取り決裂をした夘月に肩入れをしているのもこんな自分と重ね合わせているからかもしれない。
暗い運命に翻弄され、どういうわけか破滅へと突っ走り始める自分に…。

「こんな調子だと、このオリハールという戦闘機のデータを横流ししたのも違う人みたいね」
彼女は目の前に並ぶ戦闘機を見てつぶやく。
紋章の女は窓の向こうで滑走路から飛び立つオリハールが、前に余所で見かけた同型機より小型軽量化されてスッキリまとまっている事に気付いた。
さっき格納庫を見学させてもらった際、コアとなる球体の輝きの凄まじさも、整備員から予めサングラスを寄越されていた程であった。

供給元のデータの正確さと製造元による技術力の高さ。
加えて売り込み先が航空自衛隊となれば、国内で公式に(多少非公式でも)試験飛行が可能な分の優位があったと見られる。

彼女は時折多少の大人げなさから鑑識眼を曇らせる事もあるが、地球に潜伏する異世界人の中でも切れ者の部類。

そして単独行動ではあっても人脈は広く、今回はそうした伝手から防衛省関係者に化けて出入りしていた。

「人脈…か。」

紋章の女は消え入る様な声で呟きテーブルを立つと、サンドイッチとアイスティーの空容器を分別しながら片付ける。

彼女の主な人脈、異世界から来た同業者や地球側での協力者、利害の一致からくる人間関係。
地球の友人はいないこともないが、異世界人である事を隠し複数の偽名と身分を使い分ける生活。
心から全てを打ち明けられる友人など一人もいない。

「(私があんな奴に…嫉妬しているというの?)」

アインは星見崎姉弟に全てを打ち明け、居候の友人として潜伏…いやあれはもう潜伏とは呼べない。
なら『あれ』をどう呼ぶか紋章の女も理解している。
それをはっきりと認めてしまえば、壊れてしまいそうだった。

「(いいんだ、別に私は奴みたいになりたいだなんて、考えてない。)」

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