世界の中心で平和を叫ぶ。 48
「啓太さま、どうもありがとうございます!
私ども親子、この名前を大事に使わせていただきますね!」
「あ、ああ。そんなに喜んでもらえるなんてうれしいよ」
あまりの感激ぶりにズキズキと良心が痛み出す。
根は善人のくせに、慣れないことをするからこういうことになるのだよ、啓太クン?
しかしそんな啓太の良心の呵責を知らない夢は、更なる追撃を試みる。
「いえ、謙遜することはありませんよ、啓太さま?
我々にとってお役に立てるだけでも喜ばしいのに、名前までいただけるなんてすばらしいことなんですよ?」
「ハハハ・・・。そんな大げさな」
「「そんなことありません!」」
力なく笑う啓太に、怪人親子改め鈴と空は真っ向から反論する。
日常生活で困らないようにつけただけなのに、この喜びよう・・・。
しかもちょっとしたイヤミのつもりでつけたのに・・・。
ますます募る罪悪感に、たまらず啓太は話題転換を試みた。
「そ・・・それでな?もしよかったら午後からおまえたちの服を買いに行きたいと思うんだけど・・・」
「「「?!」」」
啓太の言葉に、3人の目は驚きで大きく見開かれた。
その驚きようはすごく、とてもさっきまで名前のことで喜んでいたとは思えない。
あまりの変化に、啓太は困惑しながら尋ねる。
「な・・・なんだ?オレ、何か変なこと言ったか?」
「い・・・いえ、そうではなく・・・」
まだ驚きから立ち直れていない夢が、何とかそれだけ答える。
いったい今のやり取りのどこに、そんな驚くことがあったのだろう?
原因追求のため、ここで彼女らの洋服事情について説明しておこう。
基本的に彼女ら怪人は、啓太の服を拝借して生活している。
もちろん女物の下着はないので、全裸の上から直に身につけている。
いくら啓太が童貞を卒業して一皮向けたとしても、一皮は一皮。
女の下着のことなんかわからなし、1人で買いに行ってやる度胸もあるわけがない。
とは言え、プロポーションのいい彼女たちに自分の服が合うわけがなく。
ズボンが入らなかったり、Tシャツの胸や襟の部分が伸びきってしまったりする問題が発生していた。
そこで啓太は清水の舞台から飛び降りる覚悟で、夢たちの服を買いに行こうと提案したわけである。
当然、彼女たちも喜んでくれるだろうと思っていたのだが・・・。
結果はご覧のとおりである。