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ギアの花火
官能リレー小説 - SF

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ギアの花火 2

「そんなに違うんですか?」
「全く違うな。操縦桿はあっても、入力装置や表示パネルなどは一切無い。そもそも、便宜上操縦席と表現しているだけであって本来は操縦席と呼べるような代物ではないのだ」
「はあ…」
そう言われても今いちピンと来ない俺だった。まあ確かに、操縦席というよりは何か別のもののようにも思えるけれど…。
と、そこでヴェアード博士が〈十一番目の狩人〉に向かって歩き始めた。
どうやら何か確認する事があるらしい。俺もついていく事にする。
〈十一番目の狩人〉のすぐ近くまでやって来ると、博士はその機体を見上げてから俺に言った。
「これを見てくれ」
そう言って指差したのは、機体の胸部だ。どうやらそこに何かがあるらしい。俺は言われるままに視線を向けて、そして驚いた。
「こ、これは…」
胸部装甲がうっすら透けており、操縦席らしき空間が見える。そこに誰かが浮いているように見えたのだ。
「人が乗っているんですか?」
俺は思わず尋ねる。
「ああ。発見された時からあの中に居た。彼は大崩壊以前に乗せられた生け贄の様なものだったのかもしれんな」
「生け贄?」
「うむ。操縦席の中で全裸で漂いながら眠り続けているのだ。装甲の至るところに彼が外部から強制的に閉じ込められたらしい痕跡がある」
こんな狭い空間に全裸の人間が閉じ込められる──それも、恐らくは遥か古代の時代の人間が…。
一体それがどんな状況だったのか、俺には想像もできなかった。だが、少なくともまともな扱いをされていたようには思えない。
俺は改めてコクピットの中の人物を見た。
どうやら年齢は二十代前半くらいだろうか?
年齢は俺とそれほど変わらないように見えるのに、既に人間らしい日常生活から切り離され、こんな狭い場所に押し込められる運命を背負ってしまった人物…。
なんだかやりきれない気分になるが、それと同時に俺は胸の奥が熱くなるような不思議な感覚を味わっていた。
その感情が何なのかは、自分でもよく分からない。ただ、胸の奥に小さな火が灯ったような不思議な熱を感じていたのだ。

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