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荒れた星の戦士
官能リレー小説 - SF

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荒れた星の戦士 1

風が吹いていた。
 硬く、草の根さえも立ち入らせぬ大地に積もった砂を、さらっては、またどこからか運んでくる。
 星が何度沈み、幾つの月が欠けたのか。知る者は数えるほどか、あるいはもういないのかもしれない。しかし月の満ち欠けも、風の行き先も、この地に住む人々にはどうでもよいことだ。今の彼らには自らの命と、これからの生活が全てなのだから。

太陽系から遠く離れた辺境の星ゼラール。
人類の故郷である地球とは違い、地表のほとんどが乾いた大地に覆い尽くされている。鉱物等の資源は豊富にあるものの、過酷な環境と辺境の星に存在することもあって、開拓がなかなか進んでいないのが現状だ。
古来から開拓者といえば男性が中心だった。辺境の惑星では賄えない需要もある。性がそうだった。
重労働そのものはAIとロボットで行えたが、性的慰安はやはりナマモノがよいとされ、特例的な措置が検討された。
地域限定とも言えるクローン女性で、成人女性の細胞を利用しているために寿命は短いものの、分かりやすくセクシーな外見と従順な性格と設定された。
当初は女性団体などから強い反発があったが、議場で『だったら、お前らの中にゼラールにいく度胸がある者はいるか?』との問いに沈黙とのリアクションが決定的となる。
最後は、アルコールや薬物に比べれば良いとの主張によって開拓者への贈り物が実行へと移された。
積み荷を満載したゼラール行きのシャトル「レッドドラゴン」が出港した。
まずは様子見ということで、試験的な航行だった。なのでシャトルは小型で型も古かった。
レッドドラゴンという妙に格好いい名前も正式なものではなく、偽装のためにつけられたものにすぎない。
そのシャトルには招かれざる客が居た。格納庫に並んでいたコンテナに隠れていた少年が動き始める。
一見密航しているかのようだが、荒れた星に向かうシャトルに密航するというのは考えにくいことである。現に少年の主目的は密航ではなかった。
スラムで育った彼にとって、美しくエロく従順な女は手に入らない高級品だった。
娼婦として生きる女たちは強かでズル賢く、何も持たない少年は相手にもされない。
同年代の少女らは運良く娼館か金持ちに拾われるか、あるいは物言わぬ死体になるかだ。
外から堕ちてくる女もたまにいたが、戦争か事故で醜く傷ついた者か、性根の歪んだ者など碌な奴は居ない。
そんな少年は街角の噂話で、辺境行きのシャトルと積荷のクローン女の存在を知ったのだ。
どうせ裏の支配者たちの使いっ走りか、物乞いしか未来は無かった。ならばこのチャンスに賭けた。
一生縁のない美女と身体を交えたい。上手くいけばどうにか盗み出し、どこかで娼館を開きたい。

わざわざ辺境に行きたがる人間などいない為か、少年でも必死になればコンテナに隠れることが出来た。
そうして地球圏から離れたシャトルの格納庫の片隅で、1人の少年の人生を賭けた冒険が始まる。

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