パラレルワールド 14
しばらくの間、リビングのソファーに座って待ってるとバスルームからシャワーの音とママの鼻歌が聞こえてきた。
ちょうど僕が座っている位置からトビラのガラス越しにママの裸のシルエットが見えている。
さやかちゃんが話しかけてきた。
「ママ、家族が増えてうれしいんだね」
「さやかちゃんは…ママの他に家族は?…」
「私、一人っ子で、ママと母一人子一人なの」
「そうなんだ」
僕はさやかちゃんのお父さんのことが気になったが、改めて後で聞こうと思った。
「それにしても、さやかちゃんのママッて若々しくて奇麗だね!…スタイルだっていいし…」
そんなふうにさやかちゃんとおしゃべりしていると、バスルームのドアが開き、愛香ママが出て来た。この時、愛香ママの格好は僕たち3人と同様の下着姿だった。
「ふうー…さっぱりしたわ!」
僕は思わず、風呂上がりの愛香ママに見取れてしまった。
「春木くんったら、私の身体、しっかり見つめちゃって。…私ってそんなに奇麗かな?」
愛香ママは僕を見つめながら満面の笑顔で言った。そこへ夏奈が傍に寄って来て、
「お食事の仕度ができましたけど…」
僕たちはリビングに移動した。
テーブルも、並んでいる料理も、以前の世界のものと変わりなかった。僕はいつも座っている席に座った。夏奈も以前と変わらない席に座った。
でも雰囲気は全然違う。ちょっと年上の彼女と若い「ママ」そして夏奈までが皆下着姿で食事しようとしている!
AVの一シーンかと思うくらいだ。
「「いただきます」」
四人は食べ始めた。
ここで、いくつかわからないことを聞いておこうと思った。
「あの、ええと、ママ」
「なあに?」
「ええと、まず、男が生まれなくなって30年、って、どういうことなんですか?…ええと、どういうことなの?」
愛香ママはちょっと笑って、ちょっと顔を曇らせた。
「うん、どこから話そうかな。Y染色体って知ってる?」
「うん。遺伝子の中の、男だけが持っている部分」
「そのY染色体がね…多分何かの化学物質によって、作られなくなってしまったの」
以下省略、
ママは遺伝子がどうとか、難しい話を永遠と話していたけど、僕にはほとんど理解できなかった。
「ごめんね。ママは医学や化学の話になると、永遠と話す悪い癖があるの。」
「うん。全然わからなかった。」
明日は引っ越しで、今日は4人で同じ部屋で寝ることになった。
4人で一緒に寝るのに、今は使われていない両親の部屋を使うことにした。ベッドは2つで、2人一組になって1つのベッドで寝ることになった。
「私、お兄ちゃんと一緒に寝る」
夏奈が真っ先に言った。
「ねえ、いいでしょう?…私、お兄ちゃんと一緒に寝たかったんだ」
「いいけど、今夜だけだぞ」
僕は夏奈と、さやかちゃんは愛香ママと、それぞれ同じベッドで寝ることになった。
僕も、さやかちゃんも愛香ママも、パジャマを用意してなく、下着姿のままで寝ることにしたが、十分快適だった。夏奈はパジャマが身近にちゃんとあるはずなのに、僕たちと同じく下着姿のままでいた。
「ねえ、春くん」
「何?」
そろそろ寝ようと思ったとき、さやかちゃんが僕を呼んだ。
「私の家に来たら、ビキニでもレオタードでも、いろんな格好を見せてあげるから、楽しみにしててね」
「ありがとう!楽しみにしてるよ」
そして、僕はベッドの上に横になり、グッスリと眠った。翌朝、目を覚ますと、夏奈が僕の身体に抱きつきながら眠っていた。