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ハーレム宇宙戦艦
官能リレー小説 - SF

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ハーレム宇宙戦艦 13

一人の将官が反論した。
「し…しかし大元帥閣下、数々の問題点に目をつぶらねば実行出来ない作戦案を…」
「ロバート・ヘンダーソン元帥、もう良い。もう良いんだ。もう何も言ってくれるな…」
「……」
こう言われては黙るしかない。
なぜなら彼は生ける軍神…神様なのだから。
その神様はまるで可愛い我が子を見守る親のような暖かい視線をテラグチ中将に向けて言った。
「テラグチ、お前の好きなようにやってみなさい。ただし事に際しては慎重にせねばならんぞ」
「は…はい!!有り難うございます!!大元帥閣下ぁ!!!」
テラグチは幼い少年のようにキラキラと瞳を輝かせてヤマモト大元帥に敬礼した。
かくして地球連合宇宙軍は大規模作戦に向けて動き出したのであった…。


一方、地球軍の動きを監視していた火星軍諜報部は、近ごろ傍受する敵軍の通信に“DM”という単語が頻繁に出て来るのを訝しんでいた。
文脈から(暗号は解読されている)どうやらDMとは、どこかの星か宇宙コロニーの事らしい…。
それは火星中央軍総監であるナポヒストラーの耳にも入った。
「DM…?」
「はっ!おそらく敵の攻略目的地と思われますが、それが一体どこなのかが判らず…。ただハッキリしているのは敵が相当に大規模な作戦を準備しているという事だけです」
「なるほど…DMか…」
ナポヒストラーは腕を組んで少し考えた後、言った。
「火星の衛星ダイモス(Deimos)の略号とは考えられないか…」
「ま、まさか…DMがダイモスって、そんな安直な…」
「解らんぞ…宇宙軍基地のあるダイモスを占領すれば、そこを拠点にして火星本土に直接攻撃を加える事が出来る」
「そんな…いきなりそこまで深く切り込んで来るでしょうか?」
「確かに地球軍にとっては危険な賭けだ。だが大規模な兵力を動員するとなると、そう考えても不自然ではない…」
「もう一つの衛星フォボスにも宇宙軍基地はありますが…」
「残念ながら我々にはフォボスとダイモス両方を守れるほど兵力に余裕が無い…となれば我々も賭けに出ねばならん!全艦隊をダイモス基地の防衛に当たらせるのだ!」

ところがこの件がナポヒストラーのライバルのモタツキーの耳に入った。
「DMがフォボスかダイモスか判らない?それなら特定する簡単な方法がある」
モタツキーはダイモス基地に命じて偽の情報を流させた。
かなり強力な電波で、しかも平電で…

『発・ダイモス基地。宛・火星中央軍司令部。当方、タンパク質再構成システムの不調により食糧不足。至急食糧を送られたし』

地球軍の反応は無かった。
今度はフォボス基地に命じて同様の文面の通信を中央軍司令部に送らせた。
同じ食糧不足ではバレるので水不足とした。
すると地球軍に反応があった。

『DMは水が不足している模様。DM攻略の際には大量の真水を持参する必要あり』

「掛かった!」
見事な策であった。
DMがフォボス基地である事を突き止めたモタツキーは、さっそく中央軍総監のナポヒストラーに伝えた。

「…という訳でDMはフォボス基地である事が特定された。すぐに全艦隊をフォボス防衛に回すんだ」
「う…うむ、協力に感謝する…」
「いやなに構わないさ。しかしジョセフ、君は少し思い込みの強い所があるのが良くないなぁ。今回だってDMがダイモスと決め付けて、危うく火星本土が危険に晒される所だ」
「あ…ああ、そうだな。これからは気を付けよう…」
「本当に頼むよ!亡きカーター主席も言っていたように、火星の軍事面は君の双肩に掛かっているんだからね」
モタツキーはナポヒストラーの肩をポンと叩いて部屋を後にした。
「いやぁ、今回はモタツキー殿に助けられましたね…」
副官がそう言い掛けた時…
「うがああぁぁぁっ!!!!」
ナポヒストラーは突然叫ぶと机の上の書類入れやペン立てをなぎ払った。
「そ…総監殿…!?」
「モタツキーめぇ!!!もう主席気取りかぁ!!俺の職域に無断で踏み込んで来た上に偉そうな口をききやがって…一体何様のつもりだぁ!!?クソォ…覚えていろよ!!この俺を見下した事…いずれ必ず後悔させてやる!!」
「…!!」
火星政権内部に徐々に暗雲が立ち込め始めた…。


地球連合宇宙軍・統合参謀本部長マサノリ・クジ大佐は熱い大和魂を持った漢(おとこ)だった。
士官学校を首席で卒業し、努力家で、高潔な人柄で、(主に同じ日系人の)部下達からも好かれ、(机上演習で)作戦立案させれば敵無し、そんな彼に(主に日系人コミュニティーの中で)付けられた渾名は“作戦の神様”であった。
どうも日系人は“神様”が好きらしく、そこかしこに“神様”をでっち上げて祭り上げる癖があるようだ…。

先の火星事変の折、若くして将来を期待されていたエリート中のエリートであったクジ参謀は、作戦参謀として火星本土攻略作戦の作戦立案を担当した。
結果は…大敗。
実は彼の立てる作戦は神憑り的精神論に基づいた全く合理性に欠ける物であり、様々な不確定要素や不測の事態を伴う実戦においては全く役に立たない物である事が判明した。
まさに机上の空論で、そんな彼の作戦によって多くの将兵が戦場の露と消えたのだった。

だが、彼は挫折を知らなかった。
そもそも、自分が悪いとは思っていなかった。

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