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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 2

追い詰められた男は振り向くと出刃包丁を懐から取り出したからだ。哀徒の方に突きつけて無茶苦茶に振り回しながら叫ぶ。
「来るな!来るなあっ!」
ござんなれとばかりに哀徒も脇差を抜いた。そのまま足を踏み出して距離を詰める。
斬り合いはあっという間に決着が付いた。男が手首の内側を哀徒に斬られ出刃包丁を取り落としたのである。あわてて拾おうとかがんだ男の顔面を哀徒の蹴りが貫き、そのまま失神KOとなった。
哀徒はすぐに近くの窓から身を乗り出して仲間に声を掛け、110番するように依頼した。出刃包丁に男の血を付け脇差と鉢巻は窓下の繁みに投げ込んで隠す。そうしておいて警察が来るまでの間、男が動き出さないか一秒の隙もなく見張り続けていた。
後で聞いた話だと男は自称精神異常者で、夜のうちに校内に侵入しておき朝になってから登校してくる生徒を殺傷しようとしていたらしい。
「お手柄だったね。室重君」
担当の刑事はそう言って哀徒をねぎらった。
「いえ。大したことじゃありませんよ」
「しかし素手で包丁を持った男と戦ったんだ。恐くなかったかい?」
そう。哀徒は警察の調べに対して自分は当初武器を持っておらず、襲ってきた相手の包丁を奪って斬り付けたのだと主張していた。言うまでもなくその方が正当防衛が成立しやすいからである。脇差を隠したのはそのためだ。(当然後でちゃんと回収している)
「少し恐かったですね。でも無我夢中でしたからあんまり覚えてないです」
何食わぬ顔で哀徒は答えた。実際は平常心バリバリで斬り結んでいたのだが。
「そう言えば容疑者は『刀を振り回す特攻隊の幽霊に襲われた』と供述しているんだがね。何か心当たりはないかい?」
「え?」
哀徒はドキリとした。こちらは相手が幽霊かと思って近づいたのだが、どうやら向こうは哀徒の方を幽霊だと思いこんだらしい。道理であれほどビビるわけだ。
「いいえ。気絶してる間に夢でも見たんじゃないですか?」
平静を装って哀徒は答えた。結局この件は犯人の妄想ということで片が付いた。後になって犯人は幽霊の正体は武装した哀徒だとしつこく主張したが、裏付ける証拠は何もなかったのだ。
(仲間が口裏を合わせたのは言うまでもない)
しかし肝試しをやるために校舎に侵入したことまではさすがに隠しようがなく、その件では哀徒は学校側から大目玉を食らう羽目になった。
以上が哀徒が入学一週間足らずにして表彰と停学を同時に受けるという金字塔を打ち建てた背景である。またこれ以降侍の幽霊に成り代わり、特攻隊の幽霊の噂が幅を利かせるようになったことは自然の流れと言えよう。



――あれも青春の甘酸っぱい一ページってやつなのかなあ。
そんなことを考えながら哀徒は宿直室を訪れて宿直の先生に事情を説明した。

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