魔族復興 1
城館のあちこちが燃える煙が、ここまで流れてくる。
外では激しい斬り合いや魔法の音、断末魔の声が交錯している。
年老いた魔族が呪文を唱え、少年の姿になった。
彼が何をしようとしているのか分かった俺は、思わず叫んでいた。
「待て、シュターケン爺!早まるな!」
「若様、貴方だけでも逃げてください!貴方こそが我ら魔族の希望なのです!」
「どうかお逃げください。皆の犠牲をも無駄にするのですか!」
「そんなのは嫌だ!俺も戦う!」
「この爺に、ふさわしい死に場所です。どうか、ご無事で…お連れしろ!」
護衛の者が俺を後ろから羽交い絞めにしていた。俺は抜け出そうとあがく。
戦わずに逃げるのも、彼らを死なせるのも嫌だ。
「シュターケン爺!」
「若様、御免!」
背中に衝撃。そして意識が暗転する。
「……はっ!夢か…またあの時の…」
俺は、ヴォルフラム・エルケーニヒ。魔族の王子……だった。
だったというのは、魔王だった父上も、母上も、人間の勇者と軍勢によって討伐され、今は隠れ住む身だからだ。
俺が生まれた時から守役として使えてくれたシュターケン爺は、最高位の変身魔法で俺に化けると、俺の身代わりとなって討死したそうだ。
少数の供の者の手によって、俺は無理矢理にだが落ち延びることができた。
シュターケン爺ら、幼き日から側で仕えてくれていた多くの者を失ったあの日から、俺は両親や彼らの仇を討ち、魔族の復興と人間への復仇を誓った。