僕は貴女の剣となりて 13
健人は努めて明るく物事を考えようとする性質の人間だった。そして良心的な人間でもあった。だからこそ強く頭を振って、一度は浮かんだ邪念を追い払う。
そうすると、彼の腕の中で息絶えたリアの父親の姿が、脳裏に浮かぶ。父の死に涙する、リアの悲しみに包まれた姿も。
それでも今日一日、気丈に振る舞っていたリア。優しく事情を説明してくれたリア。
彼女の姿を思い出すと、健人も粛然とした気持ちになった。
(リアさんを助けてあげたい。気丈に振る舞っていたけど、内心はどんなに辛かっただろうか……それに、これから彼女は国を背負うんだよな、その重圧は計り知れない……)
健人はリアの内心を思い、考え込んでいた。
ーーコンコン。
その時、ドアを叩く音が部屋に鳴り響く。
「? はーい。 開いてますよぉー」
「タケト様。 夜分遅くに申し訳ありません」
不思議に思いながらも、入ってくるよう勧める健人。
彼の言葉に誘われる様に開けられたドアの向こう側には、この国の女王アレグリア・リ・ラティスヘイムその人だ。
「リア?」
「あの…ちょっと今日は寝つきが悪いのかあまり寝付けなくて…。
それで…その、タケト様とお話をと…」
入室してきたのがリアだったのに首を傾げる彼だが、リアから出た言葉の意味を理解し笑いがこみ上げてくる。
「リ、リア…そ、それってつまり…あ、あはは…」
「あっ、わ、笑わないでくださいよっ。こ、これでもタケト様より年上なんですよっ?!」
顔を真っ赤にしながら訴えてくる彼女の姿を見て、彼は先ほどより大きな声を上げて笑った。
リアは可愛くほほを膨らませてむくれていた。
その可愛さに多少の罪悪感を感じた健人は正直に詫びた。
「ごめん、リア。君があまりに可愛かったから、つい…」