勇者が○○○で世界を救う! 7
「拘束するだけじゃなぁ。毒霧とか覚えられないのか?殺す奴もあれば麻痺させるのもあるだろ?」
とアルミラ。
「僕もそういうの、勉強してたんですが、今回の召しだしに間に合わなかったんです。でも、少しでも早く覚えるつもりです」
「そうしてほしいの。ロキがもっと頼りになるだけでも、私もありがたいの」
「よし、何はともあれ訓練と経験だな!」
アルミラが最後を締めた。
後世の多くの史書は、この日をもってロキ達が本格的に動き出したとしている。
この日から、ロキ達は修行や、手ごろなモンスターの討伐に積極的に動き出す。
「天空に渦巻く大雲、その偉力もて天雷を生ましめん…サンダー!」
曇り空から、細い稲妻が飛び出す。
アルミラ達と戦っていたラフ・ラビットの一匹が、この一撃で動きを止めた。
肌や神経を焼かれたのだ。
素早くアルミラがこのラフ・ラビットの延髄を潰した。
「やった!成功です!」
「ロキ、やったな!」
「油断しないの。まだいるの」
「おう!」
今のロキのサンダーで、残りのラフ・ラビットもやや腰が引けたようだ。
もちろんアルミラもユニスもその隙を見逃さない。
実戦でサンダーを初めて使えたロキも、次の相手に呪文を唱える。
アルミラとユニスが一体、また一体仕留めていたが、思った以上に数が多い。
「結構多いな!予想の五割増しか?」
「……汝の影を堕としたまえ。シャドウ!」
「今のうちに打ち砕くの!」
「おお!」
半円形に囲むように近づいてきたラフ・ラビット達を、ロキがまとめて魔法で拘束した。
手近なものからアルミラとユニスが抹殺していく。
肉が裂け、頭が砕け、血と肉の臭いが漂う。
その間にも、ロキも次の呪文を唱えていた。
拘束魔法であるシャドウは、一度唱えるとかかった相手には、たとえ術者が別の呪文に移っても、さながら麻痺毒を盛られたごとくしばらく効果が続くからだ。
「天空に渦巻く大雲、その偉力もて天雷を生ましめん…サンダー!」
シャドウの効力範囲に捉えきれなかったラフ・ラビットが接近してくるのを、ロキがサンダーで狙い撃つ。
盛大に焼け焦げて動きを止め、今度は肉を焼くにおいが漂いだす。
「ロキ!やるな!さっきより威力が上がってるぞ!」
「その調子なの。どんどん倒すの」
「はい!天雷を生ましめん…サンダー!」
アルミラ達がロキの成長ぶりに目を見張る。賞賛の声を受け、ロキはさらに呪文を唱えた。
別の一匹のラフ・ラビットに雷が落ち、今度は一撃で頸椎を焼き潰したらしく、焼け焦げてピクリとも動かなくなった。
アルミラとユニスは、シャドウで拘束されたラフ・ラビットすべてに止めを刺し終えていた。