勇者が○○○で世界を救う! 4
「今のこの世の中では、軍も各国の防衛に当てるだけで手一杯ですものね。」
「そうね。軍が国を守ってる時こそ、私たち遊撃兵が動いて、魔物の主力を叩かなきゃだし。」
魔物は無制限に増え続けており、どの国も大幅の戦力を防衛に充てるだけでギリギリなのだ。
決して軍が脆い訳ではなく、魔物は何故か、人間が多い町、都市国家等を群れを率いて攻めてくる傾向にあるのだ。
その代わり、集落といった比較的人間の少ない場所などは、被害は少ない傾向にある。
魔物が延々と増え続けている理由は、定かではない。
しかし、その原因が判明すれば、人間が魔物を駆逐する手段が見つかるだろう。
原因究明の為に動く少数精鋭。それが遊撃兵である。
「それで、今からアーロ村に侵攻を続ける魔物の主力を叩きに向かうわけですね。」
無論、遊撃兵とて一介の人間に過ぎない。
いかに勇者の子孫とはいえ、少数で動くのだ。死と常に隣り合わせであることは誰であろうと同じだった。
「そうなるわね。……そろそろ街道に出るわよロキ。背中、任せたからね。」
アルミラがウインクをすると、ロキは顔を赤らめた。
「わっ、わかりました!」
城下町の門を抜けると、四方八方に軍の兵士と魔物が交戦していた。
魔物の司令はよほど賢いのだろう。何処にどれだけの人間が住んでいるのか。どの程度の群れを率いれば人間の住み処を駆逐できるのか、理解していると言わんばかりに立て続けに魔物の群れを押し寄せて来るのだ。亡骸となった人間の数は、今ではもう知るよしもない。
「早速おっ始めてるわねぇ。ロキは、この戦況、どう見る?」
「そうですね…ゴブリンだらけなので、僕なら影を縛って拘束させて、前衛の人に袋叩きしてもらいます。というわけで、ちょっと行ってきますよ。」
ロキが交戦の場に近づくと、詠唱を始めた。
魔物との交戦は、ただの力比べだけでは勝てない。より被害を受けないように。かつ迅速に。魔物の群れを如何に効率良く潰すかが重要なのだ。
「そうね。正規軍がバテないように、私も一肌脱ごうかな。」
エルミラも同時に動いた。ロキの前に立つと、腰に下げたブレードの鞘を抜く。ロキの詠唱が邪魔されないよう、術士であるロキを守るためだ。
突撃してくるゴブリン。
ゴブリンといえど、後援の術がいかに厄介なのか知っているからだろう。
兵士の相手をしていないゴブリンたちは、一斉にロキめがけて進撃する。
「かかってきなさい!斬り刻んでやるわ!」
ゴブリンたちは、皆丸太や斧を携えており、エルミラはブレードを片手に備え、一匹一匹捌き始めた。
正規軍兵士をあしらったゴブリンたちは、徐々にロキの周辺に結集する。
一匹ずつ斬り伏せるアルミラをよそに、二人は大勢のゴブリンによって、次第に囲まれてしまった。
「……汝の影を堕としたまえ。シャドウ!」
その瞬間。ロキの拘束の術が始まった。
ゴブリンたちの影に漆黒の杭が現れると、それらがゴブリンたちの影に突き刺さる。
何が起きたか分からないゴブリンたちは、身体を動かせないまま。
勝敗が喫した。
影に囚われたゴブリンたちは成す術もなく、正規軍の兵によって一匹残らず殺された。
正規軍の勝利である。
「ふぅ。正規軍の兵も大変ですね。毎日こんな大勢の魔物を相手にしているだなんて。」
「魔法使える人が少ないからね。まぁ、作戦が物言うのよ。ロキがいなかったら、私も危なかったし。」
アルミラがロキを称賛の声を上げると、背後からぼそっと
「あんな雑魚相手に『危なかった』だなんて。重剣使いのくせにまだまだなの。精進あるのみ。」
罵られた。
「あ?……何か言ったかしら、この鉄球使いのくせに?」
気配を殺して近づいてきていたユニスに罵り返すアルミラ。