勇者が○○○で世界を救う! 3
「もし魔将軍を暗殺できれば、魔物も様々な種族の寄せ集め…すぐ足並みが乱れて統制が取れなくなるわ」
「問題はここでそこまで考えて戦おうとする人達がいるかです」
「無茶な事をして命からがら助かった人なんかは、目が覚めてて気がつくでしょ」
「道中で仲間を探していくのも悪くありません。この際、勇者の血族かよりも実力です」
魔王軍の手に落ちた地域は多く、抑圧された人々を救うことも重要であった。
道程は長く、占領に抵抗している人々の協力は不可欠である。
「ようよう、姉ちゃん!まだ誰とも組んでないのかい?」
「…あ?何か用かしら?」
高級感溢れる貴族風の服に身を包んだ厳つい男だった。
無精髭が目立ち筋肉を隆々とさせている。
「なんだよ、冷てえじゃねぇか。俺っちは富豪のリジルっつうんだ。これでも腕っぷしは立つし。……少なくとも、そこのもやし野郎よりかは、役に立つと思うぜ?」
「結構よ。あんたみたいなの、タイプじゃないの。他を当たって頂戴。」
リジルがアルミラへにじり寄る。アルミラは堪らず怪訝な顔つきになった。
「あ、僕ロキって「野郎は興味ねえな。なぁ姉ちゃん。夜の生活はご無沙汰じゃないかい?俺っちだったらたっぷり満足してやれるぜ。」
「近寄らないでくれる?くだらないこと考えてる能無しに、背中は任せられないのよね。」
「そそるねぇ。なぁ、考えを改めてくれねえか?さすがにタイプじゃねえのは辛いが、見かけ倒しじゃねぇことを証明してやるからよ。戦闘じゃ俺っちは頼りになるんだぜ。」
熱烈なアピールに、アルミラは嫌悪感のあまりに眉間にしわを寄せた。
「聞こえなかったのかしら?他を当たれと、私は言ったのよ」
一閃が走った。リジルが呑気に無精髭を触るが早いか、アルミラは喉仏目掛けて剣を振るう。
切っ先がリジルの喉仏寸前で止まる。
「っ……んだと……」
リジルはアルミラの威嚇に恐怖し、腰を抜かしてしまう。
「……悪いけれど、隙だらけだし、そんなじゃ魔物に不意を打たれるんじゃない?…ロキ、行くわよ。ここから出る」
「え、あ、アルミラさん!?」
場内がどよめく中、二人は会場から去ると、リジルは不適に笑った。
「……くくくっ。ますます、良いねぇ。こっちこそ隙を突いて、モノにしてやらぁ。」
「あー、ごほん。…くれぐれも、皆の衆。命は大切にせよ。わしからは以上だ。さぁ、魔王軍を捻り潰すのじゃ!」
王の演説が終わると、勇者の子孫たちもその場を後にした。
城下町に着いたアルミラは、颯爽に歩みを続ける。
「ちょ、ちょっとアルミラさん?」
ゆっくり足を止めたアルミラは、顔を赤らめて重くため息をついた。
「はぁ〜、またやっちゃった。私、昔から周りの状況読まずに、行動しちゃうところがあるみたいでね。妙に絡んでくる男ってキライなのよ。」
「そ、そうなんですか。」
「うん。…あー、恥ずかしかった!周りの人みんな固まってたし。……じゃ、改めて自己紹介するわね。私はアルミラ。アーロ村の出身なの。」
「アーロ村、ですか。あの勇者のシンボルが祀られてる所ですよね。」
勇者の盾。かつて勇者が使用していた防具であるが、未だかつて如何なる勇者の子孫でも扱えないと言われている代物である。
「そうよ。でも、つい先日近くのリタ町が襲撃されちゃってね。早く私も防衛戦に参加しなきゃいけないの。…当然、貴方も協力してくれるわよね、ロキ。」
魔将軍のことも懸念の一つだが、王の提案通り、まずは魔物の進行を食い止めることが優先だった。
「まずは魔物の進行を食い止めよ、だなんて王さまにしてはアバウトな命令ですよね。戦力を均等に分散するつもりはないのでしょうか?」
「さてね。まぁ何かあれば伝令が来るでしょうし、今は各自の判断に任せるってことなんじゃない?」