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刀王伝
官能リレー小説 - ファンタジー系

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刀王伝 13

「腐ってやがる!!こんな無法がまかり通って良いのかい!?」
憤慨するローザにリンが言う。
「しょうがねえよ。弱肉強食…それがこのニルヴァディア大陸の唯一絶対の掟だからな。特にこの辺り…自由諸邦と呼ばれる地域は“ニルヴァディアの縮図”とも言われてるからな…」

大陸の一角を占める“自由諸邦”と呼ばれるこの地域には統一政権が無く、領邦(一貴族の領地がそのまま一つの独立国になっている)や自治都市が乱立している。
ゆえにそれら小邦の統治者達が悪政を行っていても、それを正す王権が無い…それを良い事に、中にはここのグロウス伯のように民を虐げる統治者も少なくない。
さらに政治的に不安定な地域のため、盗賊達が蔓延り、治安も悪いのだった…。

「…なんかアタイの住んでた山がマシに思えるよ。モンスターはウザかったけどね」
「人間なんて一皮剥けば強欲で残忍な獣だからな。特に自制心の無いヤツが権力を持っちまったら、たいてい歯止めが効かなくなって暴走し始めるんだよ」
ソフィアは言う。
「だからこそ、教会は弱き人々に残された最後の砦なのです」
「確かに教会には俺も結構世話になってるからな〜。金が無え時は食事と宿を提供してくれるんだ」
「へえ〜!教会って便利だね。飯と宿の代わりに下働きさせるドケチな小料理屋よりよっぽど良いや」
まず自分がタダ食いしようとした事実をすっかり忘れているローザであった。
リンはソフィアに言う。
「…よし!これも何かの縁だ。俺があんた達の用心棒になってやるよ!」
「ええ!?よろしいのですか?」
「ああ、もちろんさ!ああいうヤツラは一回追っ払ったぐらいで諦めるような連中じゃねえからな。必ず仲間を連れて報復に来るはずだ」
「ありがとうございます!しかし、何もお礼が出来ませんが…」
「礼なんて気にする事は無えさ。しばらく泊めてもらって飯を食わせてくれたらな…」
「何だいリン?さっきまでは関わるなって言ってたクセに、急に手のひら返しやがって…」
ローザは怪訝そうな表情を浮かべて尋ねる。
「良いじゃねえか。もう関わっちまったんだからよ。ここで見捨てて“はい、さようなら”って訳にはいかねえだろう?」
実はリン、口では上手い事を言っておいて、下心があった。
彼の目当ては…もちろんソフィアの体である。
(さっそく今夜辺り夜這いをかけさせてもらうとするか…へへへ)
一方、ローザはリンの企みなど塵ほども気付かなかったが、領主の事が気に入らなかったので賛成した。
「しょうがないねぇ…ま、アタイもクソ領主にはムカついてたんだ。ちょうど良い!あの腐れ外道ども、一人残らずブチのめしてやるさ!」
それを聞いたソフィアが慌ててたしなめる。
「…それはいけません!いくら人の道に外れた人々とはいえ、軽々しく命を奪う権利は誰にも無いのですから…!」
「何だよ?こんな時まで人道主義か?」
「ええ、とりあえず先ほど殺めた方を埋葬して弔って差し上げましょう。手伝っていただけますね?」
「さっそく面倒くせえ事になってきやがったな…」
嫌そうな顔をするローザをリンは宥める。
「まあまあ、良いじゃねえか。墓穴ぐらい掘ってやろうぜ?」

教会と冒険者は持ちつ持たれつの関係にある。
神官達は冒険者に宿と食事を提供するだけでなく、冒険者の悩み事を聞いたり相談に乗ったりしていた。
また、冒険者も教会の神官の用心棒をしたり依頼を受けたりするのであった。


…その頃、村から少し離れた所にある丘の上…そこに、まるで村を威圧し見下ろすかのようにグロウス伯爵の城が建っていた。

「なるほどぉ…つまり、その冒険者に邪魔されて失敗した…という訳だねぇ?」
「へ、へい!その通りでさ、伯爵様!」
「これが小柄な女なんですがね、もう強いのなんの!ひと蹴りで仲間の頭をブチ割っちまったんでさぁ!」
城内の一室では先程のゴロツキ達が、偉そうに椅子にふんぞり返った男…エルオス・グロウス伯爵に報告をしていた。
伯爵はでっぷりと肥え太った五十絡みの中年男で、右手には骨付き肉、左手には真っ赤なワインで満たされた黄金の杯を持って、むさぼり食っている。
その左右には裸の上に宝石などの装飾品だけを身に着けた豊満な体の美女が侍り、前には黄金の皿に山と詰まれた骨付き肉が置かれていた。
「…んでぇ、君達は仲間を殺された事にビビって尻尾を巻いて逃げて来たと…そういう訳だねぇ?」
伯爵はギロリとゴロツキ達を睨み付ける。
ゴロツキ達は慌てた。
「い、いや!ヤツぁ本当にヤバいんで…!」
「そうでさぁ!もし殺り合ってたら全員殺されてましたぜ!目ぇ見りゃあ解るんです!」
「ふむふむ…なるほどねぇ〜…いや、君達の言いたい事は良ぉ〜く解ったよぉ……騎士団!」
伯爵がそう言うと、鎧兜に身を固めた一団がガチャガチャと音を立てて現れ、ゴロツキ達を取り囲んだ。
彼らは騎士…グロウス伯の正規の臣下達だ。
「ひいぃぃっ!!!?」
「お、お許しください伯爵閣下ぁ!!」
「どうかぁ!お慈悲をぉ…!!」
「もう一度!もう一度だけチャンスをください!!今度は必ず任務をやり遂げますんでぇ…!」
必死に懇願するゴロツキ達…だが伯爵は鬱陶しそうな表情で冷たく言い放った。
「ハァ…往生際が悪いよ君達ぃ…任務に失敗したら死…解ってたはずでしょう?…ま、そういう訳だから…死んでよ」
次の瞬間、騎士達の槍がゴロツキ達を貫いた。
彼らの断末魔の悲鳴が部屋中に響き渡る。
そんな残酷な光景を伯爵は無感情に眺めながら、右手に持った肉にかじり付いて言った。
「…ムッシャ、ムッシャ…ふむぅ…小柄な女冒険者かぁ…興味あるねぇ…」

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