死後の人生 6
(も、もう一度……)
直哉の顔が吸い込まれていく。生きていれば寝息が触れる辺りまで。
けれどもそこで止まった。
もしかしたらその唇で翔の怒張を貪ったのかもしれない。そう思うと途端に不潔に思えてくる。
(どうしてあんなやつと……)
外見だけ見ればお似合いなのだが、一方的にキスを交わしただけで自分のもののような心境に囚われている。
なにせファーストキスの相手。彼に女性を感じさせた人物。
直哉は背後に戻り希に覆い被さると、黒のブレザーの上からあの乳房を鷲掴みにする。
「うわ、服の上からでもスゲー……」
ゴワゴワした中にある淫靡な感触を取りこぼすことなく、緩いリズムで大きく揉む。
突っ伏した姿勢で腋が開いているから乳房をこねるのは容易。机の手前の所で垂れるようになっている豊乳を、翔がやっていたように後ろから両手で堪能する。
(俺……今……堂々と胸揉んでるんだよな……)
眠気に負け半壊している生徒たちを前にして自分のやるべきことだけを淡々と行っている楓。
将来のために眠気を振り切り授業を受ける半数の生徒たち。
希の胸を揉みしだいている存在に誰も気付いていない。
無視されることに慣れてしまった直哉でも、今の状況は興奮せざるを得なかった。
「んっ……」
ブレザーのボタンを外して開襟シャツ越しに揉み回ている最中、希がむずかるような声を漏らした。
寝顔はやや苦悶に歪み、長く引かれた眉が微かに根を寄せている。
(エロ……頼むからそのまま【動くな】よ)
ブレザーをはだけ、シャツとブラ越しに大きな胸を堪能。ブレザーの厚い生地がなくなり、淫靡な感触はより鮮明に掌に伝わる。
「ん……んんっ……あぁぁ……」
大きく掬い上げたり軽く揺らしたりと思い付く限りの堪能法を交えながらムニムニと乳房の形を歪めていると、希の苦悶が深くなった。
湿った声が漏れ始め、身体に戦慄きが見られるようになる。少し股を開いた状態の脚も引き攣ったようになる。
薄く開かれた目は艶かしく濡れ、瞳は困惑に震えていた。
金縛り。今の希の状態はまさにそれだった。
胸の違和感に気付いたときには既に遅く、自分の意思では声を上げることもままならない。
(これ……あああ……)
胸を揉まれているのは分かる。それに対して叫ぶことはできず、喉につっかえた吐息が唇の隙間を抜けるだけ。
辛うじて動く目で背後を窺ってみても誰かがいるようには見えない。けれどもまるで、見えない誰かに後ろから胸を揉まれているような確かな感触は確実に身体を苛んでいる。
「はああ……ぁっ……」
スルリと腿を滑る感触に脚が震えた。
けれどもそれだけ。机に突っ伏した姿勢はどうにもできず、股を閉めることさえできない。初めての金縛りに対する恐怖と確実に感じてしまっている身体の反応が、震えとなって表れるだけ。
それをいいことに脚に触れる何かはスカートに潜り込み、ショーツの底を擦る。スカートを短くしていたことと浅いところに掛けていたことが、このときばかりは悔やまれた。
「んんんっ……」
クロッチ越しにはそこそこに、早々と脇から侵入し膣孔をねじ開く。
柔肉の隙間に及ぶ微かな拡張感に希は喉を絞り小さく喘いだ。
(やあ……)
ムードもへったくれもない。女性器を触り興奮しきっているのが容易に分かるほどの、自分主体の急な愛撫。
しかも何が悲しいかと言えば、授業の真っ最中に見えない相手から身体を触られるという異質なシチュエーションにしっかり濡らしているということ。
「ふんんっ……んっ……」
胎内を拡張し蠕動する何か。
自分の耳にヌチヌチと湿った音が聞こえてきそうで、希は頬を赤らめる。
金縛りからくる心理的恐怖と身体を蝕む快感の狭間で、なんとも言えない悩ましげな表情を浮かべていた。
(ダメダメダメっ! ヤバい!)
身動きが取れない中、身体をまさぐる感触が執拗にGスポットを責めたてる。
乳房は搾るような圧迫に苛まれ、力強く弄ばれている。
強引に激しく求められ、身体は異常なまでに興奮していた。
(そんな願望ないはずなのにぃぃっ!)
どちらかというとイチャイチャしたままもつれ込むのが好きなシチュエーション。
しかし今は金縛りとはいえ、無理矢理犯されているような雰囲気で、好きな流れとは全く異なる。
けれども、いつもと異なる入り方だからこそ興奮しているのかもしれないが、こんな状況下では認めたくない事実でもある。
「んんッ! ッ! くぅッ! あっはぁぁぁッ」
蓄積した快感が背筋を迸り、脳髄に直撃した。
フッと頭の中が白く暗転し、視界に入る全てを歪んでいた。
意識が浮遊感に浚われ、倦怠感とともに戻ってくる。