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ガルシーダの闇
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ガルシーダの闇 8

アレスを叱り飛ばす上司は、一人しかいない。聖騎士シーラとエミルが来た日にすぐに気にして駆けてきた衛兵である。
アレスが将来、街の名士になると思っている他の衛兵たちはアレスに甘い。
しかし、この上司はそこを気にしない。
バート・ウィリアム。ジェフの父親。
アレスを自分の息子と同じように厳しく接して、プライベートでは連れて歩いたり、相談を聞いたりしてくれる人物である。
今回、領主から聖騎士シーラとエミルに協力するようにアレスが指名されると、他の衛兵たちは羨ましがったが、バートはアレスに同情した。
たまたま門番としてまじめに許可証の提示を求めたのがアレスで、それで選ばれただけだとわかっていたからだ。
「危険なことは聖騎士様にまかせて、あまり無理するなよ」
バートは息子ジェフとアレスに同じことを言った。息子のジェフは「俺はオヤジとちがって出世したいんだよ!」と言った。アレスは「わかりました。すぐに門番の仕事にもどれるようにがんばります」と言う。
バートは勘の良い衛兵だった。
自警団の息子ジェフとアレスは、潜伏している犯罪者を追いかけまわす猟犬の役目だと気づいている。狩人は聖騎士でジェフとアレスではない。
聖騎士シーラとエミルが昼間の酒場で衛兵見習いアレスたちを集めて、作戦会議をしている同じ頃、街のはずれにある教会では、シスターのマリー・メイシーが悔し泣きをしながら、心臓にナイフを刺されていた。
マリー・メイシーが殺害された時、教会には読み書きを習いに来ていた子供たちがいた。
男が侵入してきて、子供たちを守ろうしたマリーをナイフで刺して逃げたと言う。
(ナイフで何度も刺すなんて……)
アレスは老婆が左胸だけでなく、服を裂かれ性器の上などもナイフで刺されていたのを見て鳥肌が立った。
目撃者は二十人ほどの子供たちである。
アレスとエミルは泣きじゃくる子供たちを落ち着かせようとしていた。
ジェフと自警団の若者たちは街で男を探した。
これは警告だ、と子供たちに男が言ったという。
(マリー・メイシーに会わせたくなかったのか、それとも本当に警告か……)
聖騎士シーラがマリー・メイシーに会いに行くのを知っていて、そのタイミングで遺体と対面するように殺害しているとしか思えない。
協力者の中に、裏切り者がいるのか。
それともマリー・メイシーが狙われたのは、偶然なのか。あえて殺人犯は目撃者を残して殺害している。酒場の主人よりかは殺害しやすいというのであれば、老婆ではなく子供たちでもよかったはずだ。
マリー・メイシーが殺害された理由を、アレスは考えてみるがわからない。
ナタリーや自警団の若者数人が子供たちを家に連れて帰宅させた。この事件で殺人犯が街にいることが街の人々の知るところとなった。


シスターのマリ婆さんが殺害された翌日から、教会にいた子供たちが失踪する事件が起きた。
朝、子供が家から消えている。
奇妙なのは、家の扉の内鍵は閉められていることであった。
家から子供が夜中に出ていったということではないらしい。
街の警備兵および自警団は子供が失踪した親たちからの詳しい話を聞いて、街中を探索したが子供たちは見つからなかった。

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