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ガルシーダの闇
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ガルシーダの闇 6

聖騎士シーラがガルシーダに来たことを知らせたかったが、バランから一方的に連絡はあってもこちらからは連絡がつかないのである。
ナタリーは部屋で爪を噛んだ。
あの夜、バランが館に訪れたが、翌朝の領主アレーナの様子は何も変わらなかった。
バランが領主アレーナに手をつけようとしていると思うと、他の女ではなく自分を弄りまわしてほしいという嫉妬と汚してはならない者を汚す、花を摘み取るのではなく踏みつぶすような罪悪感に苛まれた。
あの夜から、ナタリーにバランから連絡はない。


門番の青年アレスは、前日に聖騎士シーラを見ているから驚きはしなかったが、自警団の有志で集まった若者たちは聖騎士シーラの美貌に視線が釘づけであった。
夕方から夜間だけしか営業しない酒場に昼間から集まったのは、自警団で宴会や何か企画があるときは集会所として、この酒場を使っているからである。
エミルは、バランの背丈や体つきなどの身体的特徴と逃亡中の殺人犯であると説明した。
「見かけても自分で捕まえようとしないでくださいね。他の街で五人がかりで捕まえようとした人たちが怪我してますから」
自警団の有志の十人は、捕まえて聖騎士シーラに近づくきっかけにしたいと内心では張り切っていたのだが、釘を刺された。
アレスがエミルに質問した。
「あとをつけるのもダメかな?」
「人目につかないところに誘い込まれて、殺されてしまうかもしれませんから」
「あら、そんな殺人犯がお店に来たらどうしましょう、こわいわぁ」
坊主頭の全身筋肉のような巨漢、酒場の店長が体をくねらせて言った。
アレスと自警団の若者たちは思った。店長のほうが押し倒すほうじゃないのか……。
「お店に来たら、他のお客と同じように接して、あまり話かけないほうがいいかも」
聖騎士シーラは黙って全員の話を聞いていた。
自警団のリーダーの若者は街の地図を取り出し、エミルの前に広げた。
こいつの家はここ、この酒場はここ、領主様の館はここと印をつけていく。
「全員、今のところそれらしい奴を見かけてないとすると、砦のあたり、教会と墓地のあたり、宿屋のあたりぐらいしか調べてないところは残ってない。このうち教会にはシーラさんがマリ婆さんに会いに行くそうだ」
マリー・メイシー。シスターで街の子供らに読み書きを教えたり、葬儀や結婚式などのときは、彼女が祈りを捧げている。
「宿屋のうちアレスの実家の黒猫亭はアレスに任せるとして、安宿のほうはどうするかだな。砦のほうは鍵は閉まっていて入れないようになっていて異常なし。ナタリーが、今朝、確認済みだ」
門番をしているアレスは宿屋の跡継ぎ息子なのだが、本人は宿屋を継ぐつもりはないらしく、門番のアルバイトをしている。
黒猫亭ではない安宿は、商人や旅人が宿泊するというより、娼婦や恋人たちとするための逢い引き宿である。
「そっちは、あたしが子猫ちゃんたちに話を聞いてあげるわよ」
酒場の主人はそう言ったので、エミルはお願いしますと頭を下げた。
「はっきりするまで子猫ちゃんたちには商売しないほうがいいって言っておくわ」
娼婦たちのことを、酒場の主人は子猫ちゃんと呼ぶ。街にいつの間にか来て、いつの間にか別の街に流れていく流れ者の娼婦たちである。

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