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ガルシーダの闇
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ガルシーダの闇 5

名家エルド家の当主アレーナは十六歳である。
「……大義」
シーラはソファーから立ち上がると一礼して、片方の膝をついた。エミルもそれにならう。
アレーナは応接間の古く重さのある椅子にすっと座る。シーラはそれを確認すると挨拶を続けた。
「王都クラウガルドよりまかりこし申した。王立神聖騎士団巡察史シーラ・クリステファーにございます。控えるは同巡察史補佐エミル・アール」
「アレーナ・エルドです。長旅でお疲れでしょう、たいしたもてなしもできませんが、くつろいでいただければ幸いです」
「感謝いたします」
シーラがソファーに腰を下ろすと、少し緊張気味のエミルも腰を下ろした。
シーラは逃亡中の犯罪者を追跡していることを説明し、ガルシーダでの捜査の了承を領主の少女に取る。
バラン・ジョルジオ。
異教の神官として信者の女性に違法の薬物を摂取させて従わせ、奴隷として性的奉仕を強要させ資金を集めていたことを説明した。異教徒がかくまって逃がしているものと考えられ、ガルシーダに異教徒がいないか調査することを話すと、領主の少女アレーナが心配そうに「もしその神官や異教徒が潜伏していたら、私も罪に問われるのですか?」と言った。
「いえ、たとえ見つかっても領主様は罪に問われることはありません」
アレーナには言っていないが、バランはわずかな生命力の残余で生きる、いわば、さまよえる死人というべき魔人となっている。
内臓の全ての機能は低下しており、体温は氷のごとく低い。シーラと戦い敗れた。だが死骸のふりをして逃亡した。腹部から背中へ剣で刺し貫かれた傷がバランには残っているはずだ。
「どのくらい滞在の予定ですか?」
「十日ほどは必要と考えております」
するとアレーナは二人に、この館に宿泊したらいいと言った。
「ついでに何人か街の住人の方に協力をお願いしたいんですが……」
エミルは、聖騎士シーラが目立ちすぎるのでと口がすべりそうになった。
「我が家の使用人とその知り合いではいかがでしょう?」
シーラは、猟犬は多く騒がしいほうがいいと考えていた。
ナタリー、門番の青年アレス、自警団の有志と決まった。
ナタリーは連絡係、アレスは不審な人物が訪れないかを監視、自警団はバランの目撃情報がないか聴き込みである。
「ベットがふかふか、んー、幸せ」
エミルは館の客室でベットに横たわると、脚をぱたぱたさせて言った。
巡察史といっても街道を旅をするが野営の日のほうが多く、また宿屋や教会などの宿泊施設がない小村では、やはり野営するしかない。
宿泊施設のない集落では旅人などの余所者には警戒する傾向が強い。
シーラの考えでは。バランは聖騎士が追って来たとわかれば、手下の信者に館に火を放つぐらいのことはやりかねない。
気楽なものだ、とエミルを見つめた。
シーラはエミルと一緒に旅をしていると、たまに忘れかける人間らしさを思い出させてくれる気がする。
敵は人間離れしているか、人の命など道具にしか思っていない悪党で、殺し合いを続けていると心がすさむ。
「明日は協力者たちと会うために街に出るのだから、ゆっくり休みなさい」
エミルにシーラが穏やかな口調で言った。
ナタリーは男の名前と、異教の神官だと知った。

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