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ガルシーダの闇
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ガルシーダの闇 4

騎士は裁判なしに罪人を処罰することを法で認められている。悪党からすれば、生きた処刑台と執行人のセットのような存在である。
神聖騎士団は自警団や警備兵とちがい治安維持が本来の任務ではないのだが、民衆からすれば法と秩序と正義の象徴のように思われている。
聖騎士が特別に処刑すら許可されているのは、人の姿と変わらないが人ではない魔人を討伐するためである。
目の前で強盗が人質を取っていれば、シーラは強盗をためらいなく斬り殺す。それどころか人質ごと斬り殺しかねない。
しかし、エミルが旅人のように露店で買い食いしたり、旅に必要な道具や携帯食などを商人から値切ったりするとシーラはいい顔をしない。
威厳が損なわれるというのである。
エミルにはそこがいまいちわからない。
実際に旅人の兄と妹が商人の荷馬車を襲撃し、妹を人質に二人が逃げようとした現場に遭遇したことがある。
シーラは妹を先に斬り、そのあと逃げずに泣きながらかかってきた兄を斬った。
見ていた民衆からはざわめきが起きた。
エミルが二人は兄妹で共犯で他の街でも同じ手口で行っていたことを街の自警団の者に説明しなければならなかった。
酒場で噂話を聞き出すのも、街の出入口である門で目立つとやりにくい。
群雄割拠の時代の発端は、異民族の暮らす土地を人間の領主が兵力で独断で奪ったことから始まった。異民族は人間より長い歴史があり、人間と異民族は互いの領土を侵略しないというのは暗黙のルールとなっていた。
これに対して異民族の奴隷化や奪った土地の開拓などを許可した帝国に対して、独立を宣言した領主たちは同盟を結び帝国は内紛から分裂状態となった。
帝国が滅亡したあとは、打倒帝国の旗印が失われ領土争いが起こり同盟は瓦解した。
異民族と共存して友好的だった領主は異民族の奴隷政策には反対し独立した。帝国も滅亡したが、異民族の国は再興することはなかった。
異民族の魔法技術は今でもゴーレム馬や病や傷の治療など、活用されている。ゴーレム兵器開発や兵の身体強化など戦争中に呪術による戦術の結果、戦争は終結しても呪術による身体改造された魔人が残った。
フェルナンデスは魔法技術が悪用されるのを警戒し、さらに魔人の犯罪者を処罰する組織を結成した。
帝国の滅亡により異民族の奴隷化政策はなくなったが、差別は残った土地も少なくない。
エミルも人身売買されかかったが、シーラによって救出され、騎士団員の騎士見習いとなり補佐官としてシーラと旅を続けている。
異民族の魔人たちは人間の国ではなく、異民族の国の再興を旗印に暗躍している。
百年経過しても、差別と民族紛争は残っている。
エミルは異民族の祖国復興という考えはない。ただし、異民族を奴隷としてしか見ない人間が、異民族を虐げているのは許せなかった。
エミルは異民族の母をレイプした何処の誰かもわからない父親の間に生まれた混血児である。
魔人たちからは半端者と嫌われ、差別する人間からは奴隷としてみられる。
シーラもまた父親が誰かわからない。孕み腹で教会に保護され、母親はシーラを産んで亡くなった。シーラは教会で育てられ、貴族の養女として引き取られた過去を持つ。
シーラは剣や魔法の才能が認められ、幼い頃から聖騎士になるために育てられた。貴族の養女として引き取られたのは、孤児では聖騎士の叙任を受けられなかったからである。
領主の館に到着したシーラとエミルはメイドのナタリーに案内され、応接間で領主を待っていた。
エミルは館の調度品の豪華さに少し落ち着きがないが、シーラは平然としていた。
二人の前に姿を現した領主は若い女性、というよりかはまだ少女といったほうがわかりやすい。
端整な顔立ちの黒髪の少女。

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