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ガルシーダの闇
官能リレー小説 - ファンタジー系

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ガルシーダの闇 16

ナタリーは門を開けておいた。
バランの死骸を発見させるためである。
バランはナタリーを深夜に呼び出し、腐敗した体でナタリーを抱いた。
闇に紛れてバランの死骸からジェフの影に潜み、ナタリーはバランに命じられた通りに夜明け前に門をわずかに開いたのである。バランは、ナタリーの前に再び現れると言った。
ジェフはあくびをした。
若者たちは酒場で昨夜まではバランを捕まえて親父たちを見返してやると憤っていたのを見ていたので、変わりように驚いた。
ジェフは自警団など、もうどうでもよかった。
自分が影を使う術師となった今、この力で何をするかで、疲れが取れきれていない頭の中はいっぱいなのである。
夕方、教会に聖騎士シーラと助手エミルがゴーレム馬に乗ってやって来た。
衛兵バートは、エミルの指示に従い教会に人が入らないように見張りをしていた。
アレスは宿屋の黒猫亭から保護していた家族を家に帰らせた。衛兵隊長ケビンと一緒に孤児となった子供たちをどうするべきか、領主エミリアに援助を求めるために領主の館にいた。
「バートさん、ご苦労様です」
エミルがゴーレム馬を教会の裏手に停止させて、バートの前に走ってきた。
教会の正面の扉の前でバートは立っていた。
「私たち以外に来た者はいますか?」
「午前中に自警団の若造どもが、アレスを訪ねに来たが、それ以外は誰も来ておりません」
シーラの質問にバートは答えた。
「私たちが教会から出るまで、警備をお願いします。くれぐれも教会の中に入らぬよう、他の衛兵たちにも伝えて下さい」
シーラが教会に入って行く。
「エミルさん、その荷物は?」
「これは私たちからの差し入れです。日が暮れたら中は危険なんで、今のうちに休憩して他の衛兵さんたちにも指示を伝えて下さい」
エミルは食料と飲み物をバートに手渡して、にっこりと笑う。
「かたじけない。では、我々は少し休ませてもらうとしよう」
エミルがぺこりと頭を下げて教会の中に入っていく。聖騎士シーラは愛想は良くないが、助手のエミルは自分の息子の嫁にしたいぐらい気立てがいい娘だとバートは思った。
アレスは失踪していた子供たちを保護したが、親たちは死亡していたことを衛兵隊長ケビンに伝えた。
「孤児になった子供たちをどうすべきか領主様に一緒に拝謁させてご指示いただきたいのですが、いかがでしょう?」
これが街の名士の息子アレスの意見でなければ、ケビンは従わずに子供たちを保護した報告だけ領主に伝えるところではある。
孤児は戦が終わったあと多くいたので、養子にしたい者がいれば一定期間、衛兵や街の裕福な名士たちが保護する法が王国にはある。
それが終わると、もらい手がつかなかった子供は衛兵や職人など住み込みの仕事につかない限り、めんどうをみない。
しかし、例外があり領主が保護する場合は成人するまで、領主が援助金を用意して親がわりに子供たちを育てる家庭に選ばれると支給される。
アレスは領主の温情を孤児たちにかけてもらえないか交渉するつもりである。
支給期間が終わっても親子として暮らす家庭が多い。幼いうちから働かされるより孤児たちにとっては幸せだとアレスは考えている。
「孤児たちの援助金を用意しましょう。かわいそうに……」
エミリアは少し涙ぐんでそう答えた。
ケビンが衛兵になったのは、父親が病で死んで一年後、母親が男を作りケビンを捨てて逃げたからだった。
(俺は衛兵になったが、同情されるほど悪い人生じゃなかったけどな)
裕福な名士の息子と領主の小娘などに苦労もしたことないくせに同情されたくないとケビンは思うが、顔に出さずに「素晴らしい」と言って感動したふりをしていた。

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