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淫妖伝――生存者(サバイバー)
官能リレー小説 - ファンタジー系

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淫妖伝――生存者(サバイバー) 11

斗真の前にカウンセリングした首から尻まで傷痕だらけの二十歳の女性は、かつてトラウマを克服して生きるために、家族や友人ではなく言いなりにできると判断した相手を選んだ。
幼い斗真は、どうやら母親の真理を選んだようだと、琴音は考えた。
琴音は斗真と真理のカウンセリングを終えると、自分のスマホに着信があったメールを見た。
「先生のことを考えて、私、リスカを我慢できたよ。えらいでしょ?」
琴音は、白衣を脱ぐと椅子にかけて「あとはお願いします」と受付の看護婦に内線を入れた。
琴音は二十歳の恋人のキスの感触を思い出しながら、彼女の暮らすマンションに向かった。
4LDKのマンションに二十歳の女性は暮らしている。背中や乳房、脇腹や内腿まで、元恋人が傷を残した。そのことを知った元恋人の父親は彼女にマンションの一室を口止め料と慰謝料をかねて与えた。
マンションの部屋に恋人はいなかった。
「どこにいるの?」
「クリニックのあるビルのそばにあるミスド」
「わかった」
琴音は電話を切るとため息をついた。
この頃はまだ、斗真には忌まわしい黒霧は見えていなかった。
人に強い絶望や死への願望(タナトス)があると、黒霧がまとわりついてしまう。
まとわりついた黒霧を乗り越えて生きるか、黒霧を取り込んで生きるかは人それぞれだが、どちらにしてもそれはこの人の世界のありがた、そのものである。
斗真はその黒い霧を完全に消すことはできなかったようだった。
確かに本人には見えていない、しかしその霧は確かに存在していた。
不気味な双子による謎の儀式は酷くおかしなタイミングで斗真を突き動かし始めた。
斗真の体から放たれた黒い霧が少年の一人を包み込んだ。
その黒い集合体は少年と斗真を閉じ込めたままどこかへと飛んでいく。その間に中の少年の着衣は溶かされ、ついには裸にされてしまう。
その様子は誰にも気づかれることはない。黒い集合体自体が誰にも見えていないのだ。
「誰か出して!」
幹弘という名の少年が球体の中でもがいた。だが、出られないどころか外の誰にも気づかれることもない。
幹弘と斗真を入れた球体はそのまま飛び、人気の無い山奥にまで到達した。
幹弘はそれでも逃げ出そうとして内壁を叩いた。

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