HRHR FANTASY 1
「え〜と・・・」
僕はぐちゃぐちゃになった自分の死体を目の前にして混乱していた。
え〜と、確かコンビニに行こうとしてこの横断歩道を渡っていたら、パトカーのサイレンが聞こえて、音の方向に顔を向けたらでっかいトラックが・・・。
気が付いたら目の前にぎりぎり原型を留めた僕とそれに声をかける警察官、僕は半透明になっていた。
「君、大丈夫か!?声は聞こえてる!?」
「こっちの僕は聞こえてるけど・・・」
「意識も、呼吸も、脈もない!くそっ、即死だ。」
どうやら僕の声や姿は認識できないみたいだ。という事は・・・
「あれっ?やっぱり僕死んじゃった?」
認めたくないけど、認めるしかないようだ。
どうしよう・・・
「あの〜、すみません。金城 優(かなぎ ゆう)様・・・で、あっていますよね。」
「えっ!」
振り返ってみると、白い服に白い翼、頭には金の輪っかが浮いている女性が立っていた。
普段ならコスプレした人だとしか思わないけど、この状態で話しかけてくるってことは・・・
「もしかして・・・お迎え?」
「あっ、はい。そのようなものです。」
天使さん(仮)はおどおどしながら答えた。
「すみませんが、今からあなたを天界にお連れいたします。」
そう言って手をしだしてきた。
この手につかまれってことかな?心残りはあるけど拒否したらどうなるかわからないし、とりあえず大人しく従っておこう。
僕が天使さん(仮)の手をつかんだ瞬間、周りの景色が一瞬で変わった。
「うわっ!」
周りを見渡すとそこは大きな部屋の中だった。
部屋は壁も床も天井も白で統一されており、目の前には大量の書類が積まれた大きな机があった。
「神様、金城様をお連れしました。」
「あっ、もう連れて来てくれたの?ありがとう。もう下がっていいわよ。」
天使さん(仮)が机に向かって一礼するとパッと消えてしまった。
「え〜初めまして金城君。私がこの世界を管理している『神』ミラウェルというものだ。」
机の陰からはっと息をのむような美女が現れた。
神って、神様?なんでそんな人(?)が?
「実は、本来君は今日死ぬはずじゃなかったんだ。」
「え?どうゆうことですか?」
「それはだね・・・」
神様のはなしでは、人には元々寿命が決まっている。しかし、あまり酷いことをするとその人間の寿命を奪うのだ。
本当は僕を轢いた男(連続強盗殺人の犯人で、あの時トラックを奪って警察から逃げていた。)の寿命を奪うつもりだったのだが、ミスで僕の寿命を奪ってしまい、あわてて返そうとしたが時すでに遅し、というわけらしい。
「このたびは本当に申し訳ない。」
そう言ってまさか土下座をしてきた。
神様に土下座されるなんて小心者の僕には耐えられず、なぜかぼくも土下座していた。
「いっ、いえ!神様だってミスもします。だから頭を上げてください。」
神様が頭を上げてくれたので、僕はこれからどうなるのか聞いてみることにした。
「本来は転生するのに数十年から数百年待たなくてなりませんが、あなたには直ぐに人間に転生する権利があります。」
「そうなんですか?」
「それであなたに選んで頂きたいんですが。記憶と人格が消えて、この世界で幸運の星の下に生まれたような人生を送るか。それとも記憶と人格はそのままで他の世界に様々なオプション付きで転生するか。」
「?どおいうことですか?」
「前者はこの世界に転生する場合なんですが、もしこの世界で転生するとしたら記憶と人格は必ず消去しなければなりません。その代り超幸運な人生を送れるようにします。」
「後者は別の世界に転生する場合ですが、今の記憶と人格はそのままでその状態で様々な能力を得られます。ただしどういった人生になるかわかりませんよ。」
「そこってどんな世界ですか?」
「一言でいえばファンタジーな世界ですかね。魔法があったり魔物がいたりしますよ。」
それはちょっと憧れる。
記憶が消えるか消えないか。そこが一番重要だ。正直記憶が消えるのは怖い。どんな人生を送るかわからないけど・・・
「別の世界でお願いします。」
「わかりました。それではどんなスキルを希望しますか?」
「スキル?」
「はい。自分の肉体を強化したり、魔法の効果を上げたりといった物から、器用になるといった物まであります。本来の残りの寿命と今回の件を、マナとよばれる世界を構築するエネルギーに変換してあなたにお渡しし、それを使ってスキルを取得します。」