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亡国の王子
官能リレー小説 - ファンタジー系

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亡国の王子 20

多くの民衆の熱狂的な声援に応えながら、パレードを終えたリードは、街の中心に在るバンセル公爵の館にやって来た。
これからしばらくの間は、ここを仮の王宮として各地に激を飛ばし、アンビエント帝室の健在を知らせ、王都奪還の為に分散している兵力を集結させねばならない。
もっとも、リードとしては、せめて今夜だけでもゆっくりと休憩し、長い監禁生活と、そこからの逃亡で疲労している身体を休めたかった。
「ふぅ〜・・・」
(明日から本格的に忙しくなる・・・それまで英気を養わねば・・・)
だが、リードが疲れを感じながら馬から下りるや、館の奥から一人の少女が彼の胸に飛び込んできた。
「リード様!」
「わッ!し、シンシア!?」
「ああッリード様。良くぞご無事で・・・王都が魔物共に落とされたとお父様に聞かされた日から、ずっとずっと心配しておりました・・・もし、もしリード様がお亡くなりになられていたら、わ、わたくしは・・・ううう」
「な、泣かないでくれシンシア・・・ほら、私は大丈夫だから・・・」
そう言ってリードは自分の胸の中で泣きじゃくる少女を戸惑いながら抱き締める。
「これこれシンシア。気持ちは分かるが殿下はお疲れなのだ。もう、その辺で離してさしあげろ」
「グスッ・・・はいお父様・・・」
バンセル公爵の言葉に少女はようやく泣き止むとリードの身体から手を離す。
彼女の名はシンシア・ジュリア・バンセル公爵令嬢。
バンセル公爵の一人娘であり、亡き両親によって定められたリードの婚約者に他ならない。
(うわッ・・・シンシアったらしばらく会わないうちに益々可愛くなってる!)
ほぼ一年ぶりに再会した幼馴染の婚約者は、魔王ジュリアを初めとする淫魔たちや、サラやエルフィーネといった美女たちとの性交を繰り返してきたリードでさえ、目を見張るほど美しく成長を遂げていた。
豪奢な金色の髪に、蒼い瞳、細い鼻、小さな唇は花が咲いたように可憐で、全体的に17歳という年齢よりも多少幼く見えるが、端正かつ可愛い顔立ちの美少女だ。
「シンシア。ワシと殿下はこれから大切な話をせねばならん。愛しい恋人との再会に水を刺すのは無粋であるというのは分かっておるが、少し下がっていてもらえるかな?」
「・・・承知いたしましたわお父様・・・リード様。残念ですが、また後ほど・・・」
そう言うとシンシアは名残惜しそうにしながらも、自分の部屋へと帰っていく。
「う〜む、なんと聡明な娘じゃ、のう殿下、まさに王妃となるに相応しいと思いませぬか?」
「え・・・そ、そうですね・・・」
昔からバンセル公爵は、亡き妻が残した一人娘であるシンシアを目に入れても痛くないほど溺愛しており、娘の後姿を見送るその顔は、とても帝国最大の実力者にして帝国の東壁と謳われる勇将とは思えないほどだった。
「ところで公爵。大切な話とはなんだ?」
「はい殿下・・・実は他でもないあの娘と殿下の結婚についてです」
「ああ、その事か・・・」
実はシンシアとリードは、魔物たちによる侵略が無ければ、今年の春に既に結婚式を挙げる予定だった。
しかし、帝都の陥落と、それに続く皇帝の処刑。
そしてリード自身魔物たちに拘束されており、結果的に二人の婚姻は有耶無耶になってしまっていた。

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