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亡国の王子
官能リレー小説 - ファンタジー系

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亡国の王子 19

何度目かの斬撃を防いだサラだったが、その瞬間色濃い疲労のせいで脚がもつれる。
「もらった!」
それを見た魔物の一匹が勝利の雄たけびを上げ、とどめを刺そうと急降下してきた。
(ああ・・・ダメだ!)
リードは思わず目を瞑ってしまう。
だが、今まさに惨劇が生まれんとするその瞬間、魔物たちに向けて無数の矢が降り注ぐ。

ブス、ブス、ブス、ブス

「「「「ギャアアアアア!!」」」」
「バカな!援軍だと!?」
ジュリアの見つめる方角にリードも必死に目を凝らす。
すると土煙を上げながら、百騎ほどの騎士の群れが雄たけびを上げながら走ってくるのが見えた。
「殿下をお守りしろ!」
「「「「「「オオオオオオーーーーーーッ!!!!」」」」」」
「あれは・・・バンセル公爵!来てくれたか!」
遠目とはいえその威厳有る風貌は見間違えようが無い。
騎士たちの先頭を走っているのは、間違いなく帝国最大の領主であり、アンビエント帝国東方軍の騎士団長でもあるブライ・バンセル公爵だった。
「殿下!ご無事ですかな?」
「ああッ!良く来てくれた公爵!」
思わぬ援軍の到着にリードの顔に生気が戻る。
リードにとって母方の伯父であり、婚約者の父でもあるバンセル公爵は、アンビエント帝国における最大の後援者であり、第二の父とも言える存在だ。
そんな彼が救出に来てくれたのだから、リードがこれでもう大丈夫だと安心したのも無理からぬ事だろう。
「くッ、ここまできて・・・撤退する!」
さすがに魔物とはいえ一国の王。
情勢が不利と判断するや否やジュリアは撤退を指示する。
「ま、待て!」
「・・・ごめんなさい坊や。残念だけど今日はこれでお別れよ。でも、安心して!すぐに迎えに来てあげるから・・・チュッ♪」
そう言ってジュリアはリードに向かって投げキッスをすると、配下の魔物たちと共に空へと帰っていく。
空を飛べぬリードは、その姿を歯軋りしながら見送るしか無かった。



『ウオオォオオォォオォーーーーーーーオォ』
沿道に何万人もの観衆の声が響いている。
『アンビエント帝国万歳!』
『リード殿下万歳!』
『魔物どもを倒せぇ!』
絶体絶命の危機をバンセル公爵に救出されたリードは、ソロモン城砦で身支度を整えた後、バンセル公爵の領地であり、東部最大の都市である交易都市バンセルに招待された。
バンセル公爵に伴われ、後ろにサラを初めとする騎士たちを従えて威風堂々と道を行くリードの姿に、沿道の国民たちは歓喜の声を上げた。
「凄い熱気ですね・・・」
人々の声援に半ば圧倒されているリードの声に、バンセル公爵は笑いながら答える。
「フフフ・・・当然でしょう。王都の陥落と皇帝陛下の死によって、多くの国民はこれで帝国も終わりかと悲観しておりました。そこに次代の皇帝たる殿下が生きておられ、無事な姿をお見せになられたのです。帝国を愛する者にとって殿下はまさに希望の象徴なのですよ」
「それで私にこんな仰々しい格好をさせたのか?」
リードは全身を宝飾でゴテゴテと飾り立てた、とても実戦的とは思えない白銀の鎧を見て呆れ顔でそう揶揄する。
「いえいえ、お似合いですよ殿下」
バンセル公爵としては帝都を占領している魔物たちを打倒し、帝国を再建する為にも旗頭であるリードを出来るだけ目立たせる必要がある。
殺された先帝の遺児であるリード皇子生存の報は、文明レベルがほぼ中世後期のこの世界では異例なほどの速さで広まっており、それを聴き付けた帝国の諸侯や、魔物たちと戦わんとする人々は、皆、次々にソロモン城砦や、リードたちが滞在している帝国第二の都市バンセルに集結しつつあった。

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