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クロス・クロニクル
官能リレー小説 - ファンタジー系

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クロス・クロニクル 6

「はぁ? 何を言ってるんですか。そんな訳無いでしょう?」
突然そんな事を言われて信じられる訳が無い。
「…事実ですよ」
「え…っ!!?」
ところが、それを肯定したのは他ならぬレオン自身だった。
「い…いや、だってあなたは普通に歩いてたし、食事だって普通に食べてた…会話の時だってちゃんと私の方を見て話してくれたじゃないですか!目が不自由そうな素振りなんて何も…!」
それに対してイリヤが応えた。
「いやいや、お嬢さん。それが彼の凄い所で、タチの悪い所でもあるんだ。彼はあたかも普通に目が見えている人間であるかのように振る舞う…まぁ、それはそれで凄い事だけどさ…たぶん見えない目を補うために、視覚以外の感覚器官が常人より遥かに発達してるんだろうねぇ、彼は…何故そうするのかは本人にしか解らないけど…」
レオンは言った。
「…別に深い意味は無いですよ。ただ、そうしていた方が色々と楽ですのでね…」
「そ…そんな…」
クィルルはその場に両膝をついてガックリとくずおれた。
レオンの、自分の全てを受け入れて優しく包み込んでくれたかのような、あの瞳は…実は何も見ていなかったのだ。
「ハァ…君のような哀れな生き物を僕は見た事が無いよ…」
茫然自失状態のクィルルに憐憫の…ともすれば冷酷な言葉を投げかけるイリヤ。
…と、そこに一人の兵士の叫び声が響いた。
「イ…イリヤ様ぁ!!」
「どうしたの?」
「レオンの…レオンの姿がありません!!逃げられました!!」
確かに彼の言う通り、今までそこに居たはずのレオンは、まるで掻き消すように消えていたのだった。
「しまったぁ!!ここまで追い詰めておきながら…クッソォ〜!!」
地団駄踏んで悔しがるイリヤ。
その様子だけは年相応に見えた。
一方、クィルルは何やらブツブツと呟いている。
「こんな…こんな事って…私、初めて私の事を受け入れてくれる人に出会えたと思ってたのに…全部、嘘だったなんて…私が勝手に思い込んでただけだったなんて…」
そんなクィルルを見てイリヤは悔しがるのをやめて言った。
「…ねえ、お嬢さん。まだ落ち込んでたのかい? 一つ良い事を教えてあげるよ。君を受け入れてくれる優しい人なんて、多分この世界には居ないよ」
「…っ!!?」
「自分の価値や自分の居場所なんてさ、自分の力で勝ち取る物じゃん。他人に与えられる物じゃない…」
(え…何この子…何か月並みな事言い出したし…てゆーか年下なのに“お嬢さん”て…でも…)
確かに月並みだが、その言葉は妙に真実味が感じられた。
今のクィルルには…。
「さすがイリヤ様です!!そこにシビれる!!憧れるぅ!!」
いつの間にか意識が戻ってたクレア少佐が叫んだ。
「とりあえず確実に言える事は、君は今まさに人生の岐路に立ってるって事だ…」
イリヤは蜂の巣にされて瀕死の一家を指差して言う。
「ほら…君の“所有権”を持ってるヤツラが虫の息だ。彼らを殺して自由になるのも良し、彼らを助けて奴隷に戻るも良し、選ぶのは君だ。…あ、そうだ。コレあげるよ」
そう言うとイリヤはクィルルに向けて“何か”を放った。
受け取って見ると、それは鞘に収まった短剣。
「…私…私が…選ぶ…?」
クィルルは手元の短剣と一家を交互に見る。
まだ辛うじて意識を保っていた男が泣きながら命乞いする。
「ク…クィルル…まさか…本気じゃないよな…そんなヤツの言葉に惑わされるな…助けてくれ…頼む…この通りだ…俺たち今まで上手くやって来たじゃないか…俺達は家族だ…なぁ?」
「…家族…ですって…?」
「そうだよ!俺達は家族だ!!クィルル!!」
「旦那様…」
クィルルはゆっくり三人に歩み寄る。
「…ざけんな…馬鹿も休み休み言え!!…です!」
「な…っ!!?」
「私は奴隷でしょう!? いつあなた方の家族になったんですか!? あなた方が今まで私の事を対等に扱ってくれた事が一度でもありましたか!? 私の家族は…私の本当の家族は…もう居ないんですよ!!家族も…友達も…故郷も…全部あなた方に奪われましたからね!!」
「は…はぁ!? 何を言うんだクィルル!? それは奴隷商人達やヤツラの行動を黙認した各国政府の責任だ!!俺達に怒りの矛先を向けるのは間違ってる!!おい!!聞いてるのかクィルル!!?」
「…黙れ…豚…」
「…っ!!? ク…クィルル…いや!クィルルさん!クィルル様!ど…どうか…命だけは…!!」
「…白豚共…屠畜してやる…」
「せ…せめて息子だけでも…!!」
クィルルは少年の太い首に刃をブスリと突き立てた。
少年は絶命した。
「う…うあああぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
男が絶叫した。


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