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クロス・クロニクル
官能リレー小説 - ファンタジー系

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クロス・クロニクル 1


幸せだなあ

僕は 君といる時が 一番幸せなんだ

僕は 死ぬまで君を 離さないぞ

いいだろう?



むかーしむかしのお話。
まだ地上が出来たばかりでなーんにも無かったころ、天の神さまたちの国から光の女神さまが地上に降りてきて、色んな生き物や草木をお作りになりました。
そして最後に女神さまは、全ての生き物たちの上に立ち、地上の世界を治める存在として自分たち神さまの姿に似せて人間をお作りになりました。
ところが、はじめは一人一人ていねいに土をこねて人の形を作っていた女神さまでしたが、だんだん面倒くさくなってきました。
そこで女神さまは木の枝をどろ水にひたして思いっきりふったのです。
するとどうでしょう。
どろ水のしずくの一つぶ一つぶが人間になったのです。
ですから今の人間には、ちゃーんと手間をかけて作ってもらった立派な人間の子孫と、てきとうに作られた出来そこないのダメ人間の子孫がいるんですって。
『サルでも解る!光の女神教聖典現代口語訳(ダカバ・レオ訳)』より一部抜粋。


その世界には巨大な大陸が一つだけあった。
大陸の形はほぼ円形で、中央部分にやはり円形の巨大な内海がぽっかりと開いていた。
もちろん綺麗な正円ではないし小島も無数に存在していたが、もし宇宙から見たらちょうど陸地がドーナツ◎のような形をしているはずだ。
その世界唯一の大陸の名を『クロス大陸』と言い、人間の越える事の出来ない海峡と山脈と渓谷と砂漠によって東・西・南・北の四つの扇形の地域に隔てられていた。

北は、ドルドニア帝国という強大な中央集権国家によって統一されていた。
西は、アルフィス王国という大国を盟主とした緩やかな合邦を形成していた。
東は、ロンファ帝国という皇帝と各地方領主による地方分権国家によって統一されていた。
南は、統一国家が無く無数の小国が乱立していた。

四地域は陸路による行き来は不可能だが海路を使えば可能であり、ゆえに通商は盛んに行われている。
そんな世界の物語である。


「こんばんは、私は旅の者です。一夜の宿をお恵みくださいませんか?」
夜、家の扉を叩く一人の青年の姿があった。

ここはクロス大陸西部の北端の小国ネルヴァ侯国領内の寒村だ。
ネルヴァ侯国は大陸西部と北部とを隔てる深〜い谷…通称“大渓谷”に隣接している。
すなわち北部のドルドニア帝国と国境を接しているとも言えた。
ドルドニアはしばしば大渓谷を越えて(その手段については後に詳述するが)西部への侵攻を繰り返しており、ゆえにこのネルヴァは西部の全国家にとって対ドルドニアの最前線基地のような物だった。

「旅人か…泊まりたければ金を出せ。金さえ払えば飯と屋根付きの寝床を恵んでやる」
家の扉が開けられて、この家の主だろうか…無愛想な顔をした中年男が現れた。
青年は硬貨の入った革袋を差し出す。
「これでお願いします」
「こ…こんなにか!?」
中年男は驚いた。袋の中身は全て金貨だった。一夜の宿どころか、十泊させても釣りが出る額だ。
「さあさあ!遠慮なく上がってくれ!汚い家だが…!」
中年男は態度を一変させ、青年を家に招き入れた。
「ありがとうございます、お邪魔しますよ」
青年が家に入るとちょうど食事中だったようで、食卓には豪華とは言えないが美味そうな香りを匂い立たせた料理の数々が並んでいた。
そこには中年男の妻と思しきブクブクに肥え太った女と、同じく太った少年が座っていた。
二人は青年の姿を見て嫌な顔をした。
その原因は青年の服装にあった。
服装自体は普通の旅人の装いだ。
動きやすそうな服の上にマントを羽織っている。
問題はその色だ。
なぜか上から下まで全て漆黒の黒づくめ。
おまけに瞳も頭髪も黒いから黒黒黒。
一方、肌は対照的に抜けるように白い。
それは見る者に不吉な印象を与えた。
だがその容貌のみを見れば美女と見紛う好青年だった。
そして腰には柄の長い細身の曲刀を帯びていた。
とりあえず青年を奥の客間に案内して戻って来た中年男に妻と息子は言った。
「あんた!何であんな気持ちの悪い男を泊めるんだい!」
「そうだよ!早く追い出してよ〜」
「馬鹿野郎、声がでけえ。この金貨を見てみろや」
男は妻子に金貨を見せた。
「あら!凄いじゃないの!」
「そうだろ?きっとまだ持ってるに違い無い。持て成して気を良くさせれば、きっともっと出すぜ」
そして男は台所の方に向かって叫んだ。
「おい!クィルル!客間のお客さんに食事を持ってって差し上げろ!」
「は…はい!ご主人様!」
台所から現れたのは年の頃17、8といった一人の美少女だった。
ほぼ白に近い銀色の髪に透き通るような蒼い瞳、そして健康的に日に焼けた褐色の肌…髪と瞳の色はともかくとして、褐色の肌は彼女がこの大陸西部の人間ではなく南部の出身者である事を意味していた。
少女の身にまとっている衣服が、男と妻子の着ている衣服よりも遥かに粗末なボロ布に近い物である事は、彼女の身分を表していた。

少女は南部から連れて来られた奴隷だったのだ。

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