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クロス・クロニクル
官能リレー小説 - ファンタジー系

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クロス・クロニクル 2


西部と南部の境界は海峡であり、四つの境界の中では最も行き来が容易だ。
それに目を付けたのが西部の商人達であり、彼らは政府と結託し、軍事力に物を言わせて南部から様々な資源を搾取していった。
そね最たる物が労働力としての人間…つまり奴隷だったのである。

「失礼いたします。お食事をお持ちいたしました…」
クィルルと呼ばれた少女は客間の青年に食事を持って行った。
「これは良い香りだ…実に美味しそうですね。いただきます」
青年はさっそく料理を口に運んだ。
「…うん、美味しい!」
「ありがとうございます。お口に合って良かった…」
「この料理はあなたが作ったのですか?」
青年は優しげな瞳でクィルルを見ながら尋ねる。
「は…はい!そうです!私が作りました!」
クィルルは思わず動揺してしまった。
幼い頃に奴隷となってから、今まで自分の事をこんな温かい目で見てくれた人は初めてだった。
大抵の人が彼女の褐色の肌を見て眉をひそめた。
彼女は奴隷となってから今日までの人生において、およそ好奇と蔑み以外の視線を向けられた記憶が無かった。
だがこの青年は違う。
純粋な一人の人間として彼女を見て、接してくれていた。
思わず胸が詰まる。
「うぅ…っ」
「?…どうかしましたか?」
「…い…いいえ、何でも無いんです。ちょっと目にゴミが入っちゃって…」
クィルルは慌ててそう言い、涙を拭いた。
彼女はただ嬉しかった。

一方、居間では中年男と妻子が青年にもっと金を出させる計画を練っていた。
「用意してやれる寝床と食事には予算上限界がある。どうしたらもっと喜ぶと思う?」
「そうだ!良い事があるよ。あの男にクィルルを抱かせるんだ。クィルルは顔だけは良いからね」
妻は名案とばかりに手を打って言う。だが中年男は難色を示した。
「いや…確かにクィルルは顔形だけ見れば美少女だが、褐色肌の奴隷女なんか抱かせたらかえって失礼じゃないか?」
「ねえ、なんでクィルルを抱かせる事が持て成す事になるの?」
息子は純粋に尋ねた。
「お前は物を知らねえな。男が女を抱くって言ったら単に抱きつくって意味じゃねえんだぞ?いいか…」
「あんた達、馬鹿な事言ってんじゃないよ!それより私に良い考えがあるんだ…」

そして青年の部屋から戻って来たクィルルに“それ”が施された。
「ゴッホ…ゴホッ…お…奥様、もうそれぐらいで勘弁してくださ…ゴホッゴホッ」
「うるさいねえ!その醜い褐色肌を隠してやるんだ!有り難く思いな!この家事しか出来ない能無し奴隷め!」
「そうだ!少しぐらい我慢しろ!良いか!?あの男に上手く取り入って金を出させろ!市場で一人売れ残って処分待ちだったお前を買い取って今日まで食わせてやった恩を今こそ返せ!」

「?…何だか家の中が妙に騒がしいような…」
客間の青年は不思議そうに首を傾げていた。
そこへ、扉が開いてクィルルが現れた。
「あ…あの、お客様…夜分遅くに申し訳ありません…」
「あ…あなたでしたか…」
青年は少し戸惑った。
まず強烈な化粧品の匂いがプーンと鼻をついた。
わずかな月明かりに照らされたクィルルの顔は、なぜか真っ白だった。
そう、実は彼女、褐色の肌がすっかり隠れる程に白粉を分厚く塗りたくられたのだ。
あの夫婦の浅はかなアイディアである。
「これは…驚きましたね。もう深夜ですが、一体何のご用です?」
尋ねる青年にクィルルは意を決して言った。
「あ…あの、旅人さん…お願いします!どうか私を抱いてください!」
そう言うとクィルルは身にまとっていた衣服を脱ぎ捨てて裸になった。
さすがに身体の方は褐色のままだ。
食べ物だけは充分に与えられているらしく、意外にも肉付きが良くて全体的にムチムチとしているが、出るべき所はちゃんと出て、締まるべき所も一応は締まっている、女らしい凹凸のある豊満な体型をしていた。
特にその乳房の大きさたるや、彼女自身の頭よりも大きな巨乳…いや爆乳であった。
そんな大きさにも関わらず形も張り具合も申し分なく、それに相応しい大きめの乳輪と乳首はツンと前方を向いて、彼女の胸元で誇らしげにプルンプルンと揺れていた。

「…良いのですか?」
青年は少し戸惑いながらも尋ねる。
「はい…」
クィルルは頬を染めて(判らないが)コクリとうなずいた。
そしてベッドに入り青年に寄り添う。
「…どうかこの私の身体、お好きになさってください…」
主人の命令ではあったが、クィルルは嫌ではなかった。
むしろこの青年になら身を任せても良いとさえ思っていた。
初めて自分を人として見てくれた彼になら…。
「ではお言葉に甘えて…と言いたい所ですが、今のあなたとは愛し合いたくはありません」
「え!?それはどうして…」
驚きと共に悲しみの表情を浮かべるクィルル。
青年はハンカチを取り出し、手元にあった水挿しの水で濡らすと、クィルルの顔に厚く塗りたくられた白粉を拭き取り始めた。
「あ!何を…」
白い部分が落ち、褐色の肌が露わになる。青年は言った。
「あなたは美しい人です。こんなつまらない細工をして己を偽る必要など全くありませんよ。私はありのままのあなたと愛し合いたいのです…」
「…っ!!」
クィルルは思わず言葉を失った。
この青年は素顔の自分を美しいと言ってくれた。
彼女はもう胸がいっぱいだった。

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