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無能王子と愉快な仲間たち
官能リレー小説 - ファンタジー系

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無能王子と愉快な仲間たち 3



事の次第はこうだ。あの後、憤慨して執務室を飛び出したアーサーは城内の一角に設けられた兵士達の詰め所に向かった。

練兵場では一人のベテラン女騎士が新人の少年兵達に剣の稽古を付けてやっている所だった。
「ほら、剣を持つ時はもっと、こう、グリップを利かせるのだ」
「は…はいぃ、隊長ぉ…」
女騎士は少年兵の一人に体を密着させて剣の構え方を教えている。
「どうした!?引け腰になっているぞ!もっと腰を前に突き出せ!こら!なぜ前屈みになるのだ!?」
オラーフ城守備隊長グリーゼラ・フォルストスは城内一の巨乳と密かに噂される自慢の胸を青春真っ只中の少年兵の背中にギュウギュウと押し付けて指導している。もちろん当人は全く意識していない。
「…自覚が無いというのは、時に、自覚があるよりも始末に追えぬものなのかも知れない…」
そんな二人の絡み(?)を見ていたアーサーはポツリとつぶやいた。
「おお、これは殿下!お見苦しい所をお見せいたしました!」
アーサーに気付いたグリーゼラはカツンッと勢い良くカカトを鳴らして直立不動の姿勢を取り、胸元に握り締めた右手の拳を添えた。これはメインランド王国軍の敬礼である。
少年兵達も彼女に倣い同じようにした。前屈みで…。
「コラお前達!そのような敬礼があるか!?殿下に対して無礼であろう!」
アーサーは少年兵達に向かって怒鳴るグリーゼラをなだめて言った。
「…いや、良い。それよりグリーゼラ、城下に行くぞ。護衛しろ」
「は!喜んでお供させていただきます。…お前達!本日の教練はこれまでとする!後は各自鍛錬に励むように!」
「「「は!」」」
少年兵達は安心したような残念なような複雑な表情で返事した。前屈みで…。



再び、酒場。
「ハァ…ハァ…」
フェリトは何とか呼吸を整えて冷静さを取り戻す事に成功していた。
(フゥ…アーサー王子、まったく驚かせてくれるぜ。スパイとして幾度もの修羅場を潜り抜けて来た俺だが、こんなフェイントを喰らったのは生まれて初めてだ…)
店主はアーサーと護衛のグリーゼラに言った。
「二人とも、悪いんだけど今、席が空いてないんだ。相席で良いかい?」
「フッ…ナメられたものだな。まさか一国の王子が庶民とテーブルを共にする事になろうとは…」
(いや、ナメられてるとかいうレベルじゃねえよ。あんた…)
心の中でツッコミを入れるフェリト。
(なんか…何でこの王子が王太子の座を異母弟に取られたのか納得できる気がする…)
そんな事を考えていると、店主がフェリトのテーブルの前に来て申し訳なさそうに言った。
「すいません、お客さん。申し訳ありませんが相席願えますか?」
「えぇ!?あ…いや、構いませんが…」
願ってもないチャンスだ。しかしまさかこんな形でアーサー王子と接触出来るとは思ってもみなかった…。
「申し訳ないとは何だ!?むしろ身に余る光栄だぞ!ひざまづいて感謝しても良いくらいだ!」
「まぁまぁ殿下、まずはお座りください。店主、とりあえず麦酒とホットミルクを…」
アーサーをなだめつつ注文するグリーゼラ。
「はいよ!麦酒とホットミルクだね」
アーサーは注文に付け加えた。
「砂糖は多めでな…」
「ハハハ!いつもの通りだね。分かってるよ」
(護衛の方が酒で王子の方がホットミルクなのかよ…)
逆だろ普通…と、再び心の中でツッコむフェリト。
「おい!そこの平民!」
「は…はい!何でしょうか?」
アーサーはフェリトにグッと顔を近付けて言った。
「貴様、どうせ腹の中で“護衛が酒で王子がホットミルクなのかよ…”とか思ってるんだろ!?」
「い…いいえ!滅相も無い!」
「フッ…僕はな、何を隠そう酷い下戸で酒の匂いだけで酔っ払ってしまうから飲む必要が無いのだ!どうだぁ!?恐れ入ったかぁ!?ワハハハハ…ヒック」
「本当だ…もう既に酔ってる…」
呆れるフェリトにグリーゼラが尋ねた。
「ところで一見したところ地元の者ではないようだが旅のお方かな?どちらから参られましたか?」
さすが最前線の砦の守備隊長を任されているだけの事はある。彼女はフェリトを一目見て、すぐに土地の人間ではないと気付いた。だがフェリトも慣れたもので平然と答える。
「はい、王都から参りました。私、フェリト・ヘンジロットという、しがない物書きでございます」
嘘は吐いていない。
だが、その名を聞いたアーサーは途端に目をカッと見開いて勢い良く立ち上がった。
ガタンッとイスが後ろに倒れる。
「うおぉっ!!?」
予想以上の猛反応に思わずビビるフェリト。
「あ…ああ…あ…あの、ひょ…ひょっとして、あの、ヘンジロット先生ですか!?あの『爆乳戦姫シリーズ』の作者の…!!」

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