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無能王子と愉快な仲間たち
官能リレー小説 - ファンタジー系

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無能王子と愉快な仲間たち 2

「フッ…残念だがマチルダ、あいにく僕は現実の女にはまるで興味が無くてね…。僕が愛情を感じるのは物語の中の女性のみ!物語の中の女神か天使のような穢れ無き乙女達に比べたら、現実の女なんてオークにも劣る醜い生物だ!」
ダメダメな発言を自信満々に言ってのけるアーサー。
「な…なんてヤツ…」
呆れて二の句が継げないマチルダ。書記達は小声で話し合う。
「何だろう…女に対して何かコンプレックスみたいな物があるのかなぁ…?」
「だから“ちょっとエッチな”とか“ポロリもあるよ”とかの15禁くらいのソフトなエロ小説ばっかりなんだなぁ…」
「そこ!聞こえてるぞ!」
「「す…すみません!!殿下!」」
「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや…お前ら凡俗な人間にこの僕の高邁な思想など解るまい!不愉快だ!帰る!」
アーサーは憤慨した様子で事務室を出て行った。


現実の女に興味がない……これはゆゆしき問題であり、ヘタをすればこの国の内乱にも繋がりかねない。王宮に仕えていた者なら誰でも知っている事実だが、どうも今の后とアーサーは関係がよろしくない。アーサーは彼女が王宮に入るのは反対していた。
「それは困りましたね……」
話を聞いたルシアは苦笑しながらマチルダに紅茶を差し出す。
マチルダは溜め息混じりにそれを受け取って言った。
「全くだ、どこかに殿下が心底愛せる女性がいないものか……」
今の王はアーサーに何かと同世代の臣下の娘や孫を引き合わせていたが、アワよくば玉の輿とあって血生臭い事件に発展した事例も珍しくなく、表沙汰になったのも一回や二回の話ではない。そこに継母が強引に嫁いで来て事態が悪化。書物の中の女性しか愛せなくなってしまったのも分かる……。
「ルシアはどう思う?」
「私では魅力が感じられないようです」
ルシアとマチルダは共に王都からアーサーに付いて来た仲で今やすっかり打ち解けている。
「……王都はどうですか?」
「ま、平常ってところね……」
確かに治世に関しては平常だが次の王に関してはまだ波乱が起きると思っていた。
「貴方の母上もしょんぼりしたでしょうね」
「はい……ですが私は必要ならアーサー様の子を宿せます」
彼女の言葉にマチルダは苦笑する。
「いっそのこと物語の様な出会いを演出できればいいのにねぇ……」


さてオラーフ城下は国境の街とあってか交易品が集まり、同時にスパイも集まる。ある場末の酒場に来た一人の男……彼もまた隣国ドラグニア帝国のスパイであった。男の名はフェリト・ヘンジロット。表向きは少しHな物語を書く作家で、アーサー王子が数々ご愛読の作品を産み出している。元々は帝国諜報部の暗号書物に綴られた文面を解読する手段としてスパイに持たせたがひょんなことから出版されてしまったのである。

お陰でスパイとしての顔よりも大衆迎合作家と言う顔を得たフェリトは、やや困惑しながらも今回この地に来た。帝国がこの城塞都市を落せない理由は、城塞の守りが堅牢な事もあるが、都市を落とせるだけの大軍がノーザン山脈を越えられないから……北国の冬の便りは早く来て、長く厳しい冬が続く……冬季の山脈越えは無謀であり、過去には一軍が丸ごと遭難した事すらある。フェリトの祖父はこの時の生存者で、彼が残した事細かな記録は帝国軍で山岳越えの教訓とされている。

「……我ながら変な事に巻き込まれたな」
ドラグニアの皇家も平穏ではない。大国ゆえに後継者争いも激しく苛烈……そこで今の帝王は「メインランドに侵攻し征服した王子を後継者にする」という無茶苦茶な命令を下した。
フェリトが仕える皇子は帝位にさほど興味が無いが状況把握のために最も信頼しているフェリトをスパイとして派遣している。

フェリトはちびちびと酒をすすりながら考えていた。
(とりあえず最優先任務はオラーフ城の防備とメインランド王家の内部事情を探る事だ。幸運な事にこのオラーフ城の城主アーサー王子は俺の“作品”のファンらしいからな…。彼に上手く取り入る事が出来れば城内に潜伏しての諜報活動が可能になる。だが焦りは禁物だ。急いては事を仕損じる。とりあえず当面は城下で情報収集だな…)
その時、扉が開いて二人連れの客が店に入って来た。この晴れの日にマントを羽織りフードを被っている。店主は二人を見るとニッと笑って気さくに声をかけた。
「やあ、王子!またマチルダさんとケンカして愚痴りに来たのかい?」
「うるさい!一応変装してるんだから気付かないフリをしろ!配慮の無いヤツめ!」
「ブフウゥーーーーッ!!!!」
フェリトは勢い良く酒を吹き出した。
(な…なぜアーサー王子がこんな場末の酒場に…!?)

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